無所属クラブ会派行政調査報告 令和6年1月15日から17日まで

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ページ番号1030352  更新日 2024年2月21日

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令和6年1月15日から17日にかけて、神奈川県川崎市、山形県遊佐町及び岩手県紫波町を視察しました。

子ども若者施策について(川崎市子どもの権利に関する条例について、川崎市子ども会議について)【神奈川県川崎市】

長野県木曽郡王滝村

調査内容

 子どもの権利担当課長より川崎市子どもの権利に関する条例について、地域教育推進課長及び課長補佐から川崎市子ども会議について、それぞれ説明をいただいた。

  1. 川崎市子どもの権利に関する条例について
     川崎市子どもの権利に関する条例(以下、子どもの権利条例)は、平成12年12月議会における議決を経て、平成13年4月1日から施行されている、我が国で初めての子どもの権利に関する総合的な条例である。その策定に際しては、子どもの目線に立った条例づくりのプロセスに大きな特徴がある。
     平成9年に発生した神戸連続児童殺傷事件(いわゆる「酒鬼薔薇聖斗事件」)に代表されるように、1990年代後半は相次ぐ少年らによる凶行がクローズアップされた時代である。川崎市でも、体罰や不登校の増加、校内暴力など、子どもを取り巻く諸課題が顕在化しており、平成10年11月に実施された市民意識調査では、「子どもの守られる権利」「育つ権利」の保障が不十分と考えている市民が4割に上っていた。こうしたことから、市としても、子どもの権利保障や救済システムの整備が課題となっていた。教員出身であった当時の川崎市長(高橋清氏)は子どもの権利保障に強い関心を持っており、平成元年に国連総会で採択された「児童の権利に関する条約」を、我が国が平成6年に批准していたことも相まって、1990年代後半から条例制定の検討を開始した。
     条例制定に当たっては、「市民とともに・市全体で・川崎に根ざしたものを」を基本理念として、子どもを含む市民とともに策定作業が行われた。具体的には、公募の小学4年生から高校生までで構成される「川崎市子ども権利条例調査研究委員会子ども委員会」等、平成10年から約2年を掛けて200回以上の会議や市民集会等を開催している。
     本条例は、子どもの権利条約の理念に基づいており、子どもの位置付けを「保護される対象」から「権利の全面的主体者」へと転換している。その理念や原則を前文、第1章及び第2章で盛り込むとともに、子どもの参加、救済、行動計画、検証など、具体的な制度や仕組みは第4章から第7章までで規定されるなど、各章、各条の内容はそれぞれ相互に補完し合うよう配慮された内容構成となっている。
     条例制定後は、子ども関係施策を総合調整する必要があることから、平成13年、子どもの権利に関する担当部署を市長部局に設置した。庁内推進体制は順次強化され、平成28年には現在のこども未来局が設置されるとともに、全庁的調整・連携体制は「川崎市こども施策庁内推進本部会議」が担っている。
     各種事業が子どもの権利に配慮しているものか否かを検証する体制については、川崎市子どもの権利委員会が設置されており、市長からの諮問に応じて市の子どもの権利保障の状況について調査審議し答申される体制が整備されている。現在は、子どもの相談体制に課題があることから、子どもの相談及び救済機関の利用促進について検証が行われている。
  2. 川崎市子ども会議について
     上述した子どもの権利条例第30条では、市政について、子どもの意見を求めるため、川崎市子ども会議(以下、子ども会議)を開催することが規定されており、教育委員会事務局が担当している。そのあゆみは子どもの権利条例施行前から始まっており、平成9年には、地域教育会議が主催となり、国の地域学校協働活動の先駆け的な位置付けとして、子ども会議の前身となる「川崎子ども・夢・共和国」が開催されている。子ども会議は平成14年から開催されており、令和4年には新たな仕組みの構築も行われている。
     子ども会議の対象者は市内在住・在学・在勤の小学4年生から18歳までで、異年齢が一緒に話し合うスタイルを基本としつ、内容によって学年ごとに分かれるなど柔軟な対応がなされている。市は東西に細長い形状をしているが、参加者は特定の行政区に偏ることなく比較的分散しているという。
     子ども会議は、子どもたちの主体的な取組として位置付けられており、テーマや市への提言内容などは全て子どもたち自身で検討される。あわせて、テーマ設定などがスムーズに進められるよう、子ども会議のOB・OGなどが登録するサポーターが子どもたちに寄り添い、必要な支援を行っている。
     令和3年度までの子ども会議では、子どもたちが活動結果を報告し、提案書を出すような形が多く、マンネリ化や参加者の固定化の解消が課題となっていた。そこで、令和4年からは、より幅広い子どもの声をしっかりと受け止めるために、大人からの情報提供や、子どもと大人が話し合う機会を設ける形も取り入れるなど、内容が拡充された。具体的には、通年で毎月子どもたちが集まって話し合いを行う「定例会議」に加え、単発での参加も可能な「カワサキ☆U18」が開催されることとなった。カワサキ☆U18では、子ども同士のほか、市長や地域の大人と話し合う機会を設けたりするなど、幅広い子どもや大人が参加できる形とし、定例会議と組み合わせた一連の流れとして開催されている。これにより、意見を言いっぱなしで終わらせるのではなく、検討経過も含めて、子どもたちへフィードバックがなされるような仕組みとすることが試みられている。
     なお、大人の「関与の度合い」や「関与のタイミング」には、課題があることがうかがえた。例えばテーマ設定について、行政が設定したものを子ども会議で検討する場合、諮問機関のような単なる「行政手続」のようになってしまい、子どもの主体性が担保できない一方、子どもたちに決めてもらう場合、同じようなテーマになりやすく、施策や取組への実現性は低くなる。このほか、これまでは子ども会議からの提案を既存事業の中で一定程度実現することができたが、新たな事業として予算を必要とする提案が出てきた場合、実現を担保する仕組みとなっていない点も課題とされた。今後は、仕組み自体に対する子どもの声を尊重しながら、マイナーチェンジを加えつつ、取組の推進を図る必要があるとのことだった。

所感と大府市への反映

 令和5年に施行されたこども基本法では、こども施策の基本理念として、「全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、自己に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会及び多様な社会的活動に参画する機会が確保されること」、「全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮されること」が掲げられている。これにより、我が国でも、ようやく子どもを「権利の全面的主体者」として位置付け、その意見表明権の担保に本腰を入れて取り組む方針を明確にしたところである。
 しかしながら、川崎市では、子どもの権利条例により、国の動きに約20年先立ち、子どもにとって最善の利益を確保し、子どもの意見を尊重することを強く意識して各種事業が推進されてきたことは特筆に値する。
 権利は子どもにとって不可欠なものであり、義務とセットで与えられるような性質のものではない。子どもが発達段階に応じてその基本的性質を学び、実際に行使することで、権利の認識を深め、権利を実現する力や他者の権利を尊重する力を身に付けることができる。
 こうした権利保障にかかる施策の一つとして、子ども会議にもまた20年以上の歴史があることは、深い意義があろう。子ども会議は、子どもを主語に据え、子どもたち自身の自発的な取組により運営されており、決して大人が場当たり的、お飾り的に子どもの意見を聴いた口実とできるような場ではなく、子どもと大人が対等なパートナーとして、共に検討する形をとっており、実際の会議の場でも、市長(福田紀彦氏)自身がファシリテーター的な役割を担い、子どもたちの意見を引き出しているという。こうした形をとれるのも、子ども会議が子どもの権利保障を根本に据えた子どもの参加手段として機能しているがゆえと考える。

遊佐町少年議会について【山形県遊佐町】

長野県富士見町

調査内容

 髙橋冠治町議会議長より挨拶をいただいた後、社会教育係の係長及び係員から説明をいただいた。

  1. 事業の背景と特徴について
     2000年代、人口減少や職住分離、進学や就職等で町を離れる若者などについて、町として問題意識を持っており、当時の町長(小野寺喜一郎氏)は、自身の青年団活動の経験から、若者に町へ愛着や関心を持ってもらうと同時に、若者の力・意見を取り入れるための環境づくりを推進したいと考えていた。こうした経緯を体現すべく、平成15年、少年町長・少年議員公選事業が誕生した。
     本事業の特徴は大きく4点ある。1点目に、少年町長・少年議員には自ら立候補し選挙が行われること、2点目に、独自の政策実現のための予算を持つこと、3点目に、町に対して一般質問を行うことができること、4点目に、少年議会独自の政策を行うことができることである。
     少年町長(1名)・少年議員(10名)の選挙権・被選挙権は、町内在住の中学生・高校生に与えられており、令和5年度の有権者は589名である。立候補者の募集に当たっては、選挙管理委員会、議会事務局、企画課、教育委員会の職員から組織される少年議会プロジェクト委員により、学校を訪問して立候補者を募集する。さらに、立候補の受付を経て、立候補者の顔写真と立候補の抱負が記載された選挙公報が作成される。定数を超えた場合は、各学校に出向いて投票が行われ、直近の投票率は87.09%に及んでいる。
     独自の政策実現のために、45万円の予算が与えられている。この予算は少年議会独自の政策を行うために与えられているもので、直近では「スポーツごみ拾いの開催」並びに「伝統体験イベントの開催」が行われている。スポーツごみ拾いは、全町民に対して折込チラシを通じて周知がなされ、子どもたちのみならず多世代から70名が集まり、交流を深めたという。
     また、独自の政策実現のための活動とは別に、町に対する一般質問の機会も設けられている。一般質問では、若者独自の視点からの要望が集約され、これまでに通学路の街灯や防雪柵の設置などが一部実現しているという。
  2. 取組の成果と今後の課題について
     本事業は平成15年から20年以上にわたって取組が続けられているが、初期から中期にかけては、必ずしも定員を満たす活動人数が確保されず、選挙が行われない時期もあった。しかしながら近年では、遊佐高校への進学を考えている生徒への説明会時に、少年議会の紹介が盛り込まれたこともあり、遊佐高校の県外留学生を中心に、積極的な立候補が見られる。現在の少年議会では、合計17名のうち、実に7名が県外留学生に当たり、中には少年議会の存在が理由で遊佐高校への県外留学を決めたという生徒もいるという。令和3年には、マニフェスト大賞成果賞最優秀賞を受賞しており、継続的な取組の成果が近年改めて町外から注目されている状況が見てとれる。
     継続的な取組の中で、少年議会の卒業生の中から、地元で活躍する人が増えてきたり、初期の少年議会に参加した方の子どももまた少年議会へ参加し、親子二代での参加がかなったりするなど、前向きなエピソードも伺うことができた。令和4年度に行われた第1期から20期で少年議会に立候補した全員に送付したアンケートでは、「遊佐町への関心や愛着に変化があった」(60%)、「まちづくりへの興味が生まれた」(67%)など、その成果は数字にも現れている。また、近年では、近隣の大学に通う少年議会の卒業生が、活動の「壁打ち役」として、自発的に参加する事例も出てきており、当人同士の感覚を共有しながら円滑な議論に寄与しているという。
     ただし、少年議会の有権者は、平成15年当時に1,316人だったが、令和5年には589人まで減少している。少年議会を卒業する18歳を超えると町を出ていかざるを得ない人も多いことから、実際の選挙の投票率が、少年議会の取組によって上昇したエビデンスは見られないという。今後は、中高生に興味を持ってもらえるような活動内容のPRと、保護者や関係機関との更なる協力が必要とのことだった。

所感と大府市への反映

 遊佐町の場合は、町から若者が減少していく危機感の中で、何とか若者に町への愛着や関心を持ってもらいたいというモチベーションから少年議会の開催へと至っているが、結果的に少年議会が政策を提言するだけでなく、独自の政策を推進することのできる仕組みとなっていることは特筆に値する。少年議会に対する大人の向き合い方についても、大人が意見を言うと正しいように感じたり、意欲が減退したりする可能性があるため、アドバイスや提案は基本的に行わないようにしているという考え方も、少年議会の主体性を大事にする上では非常に重要であると感じた。
 「少年議会」「若者議会」「若者会議」など、子ども・若者の意見表明権を担保する会議体は様々な名称で全国に広がっているが、少年町長・少年議員の選出のために選挙を行っている事例は稀である。遊佐町の場合は、仮に少年町長・少年議員に落選した場合も「少年副町長」「少年監査」などの肩書きが与えられ、実質的に少年議会の一員として議論に参加できる建付けとなっているが、選挙によって町政にコミットする自覚が生まれ、責任ある提言や政策を推進するモチベーションとなっていると考えられる。たとえ選挙まで踏み切れないとしても、毎年の1回目の少年議会では、当選証書の付与とともに「所信表明」が行われており、こうした取組は、メンバーが通年にわたり活動する中での参照点になり得ると考えられ、本市においても参考にできないかと考えるところである。
 また、最後に議長からは、少年議会との意見交換会の中で、20年後の町のことについて県外留学生が考えていることを聞けるのがうれしいとの感想があり、そうした意見交換の中から、一度町を出ても、いずれ戻ってきたくなるような地域づくりを目指したいとの考え方が示された。
 遊佐町と本市は地域課題が大きく異なるものと理解しているが、少年議会との意見交換が実際の町政の中で原動力となっていることを示すお言葉でもあり、そのような機会は本市でも積極的に取り持たれることが望ましいのではないかと考える。

オガールプロジェクトについて【岩手県紫波町】

東京都清瀬市

調査内容

 オガール企画合同会社相談役の方から、オガールプロジェクトの概要を説明いただき、質疑応答を経て、エリア内の見学を行った。

  1. オガールプロジェクトに至った背景について
     平成10年3月、請願駅である紫波中央駅が新設された。これを受け、紫波町は再開発のために10.7ヘクタールの土地を駅前に取得するも、実質公債比率の上昇や基金の減少等、財政状況の悪化から事業は頓挫した。用地は取得から10年以上にわたって塩漬けの状態となり、「町は28億円で雪捨て場を買った」と言われる有り様であった。
     平成19年、同町は「公民連携元年」を宣言した。東洋大学大学院との協定が締結され、公民連携によるまちづくりがスタートした。21年には「公民連携基本計画」が策定、議決され、「“町民の資産”である町有地を活用して、財政負担を最小限に抑えながら、公共施設整備と民間施設等立地による経済開発の複合開発を行う」として、民間との連携による紫波中央駅前都市整備事業「オガールプロジェクト」が立ち上げられた。
  2. オガールプロジェクトの概要と成果について
     「オガール」とは、成長を意味する方言「おがる」と、フランス語の「Gare」(ガール=駅)を組み合わせた造語である。紫波中央駅前を「紫波の未来を創造する出発駅」とする決意と、町の持続的成長への願いが込められている。
     平成21年6月1日、町の100%出資(現在の持株比率は38%)によるオガール紫波株式会社が設立され、「官のエージェント(代理人)として、民との調整を行う」としてプロジェクトの推進、調整を行う中核の役割を担うこととなった。「町民の財産である町有地を安売りしない」との考え方が基盤にあり、プロジェクトのキーマンとして今や広く知られる町内の建設会社経営者の方の持論である「まちづくりとは、不動産価値の向上である」という考え方のもと、リスクの少ない安定事業として評価される不動産開発を目指して進められた。用地面積ありきで容積率を設定することで、市場ニーズに対して過大な事業計画となり、「テナントは全て埋まるだろう」という希望的観測のもとに、そのまま事業を進めた結果、オープンから空室が発生するという、過去に多くの失敗例を生み出した従来のやり方を排し、

    (1)現状の家賃相場を確認した上でニーズ調査とテナント誘致をあらかじめ行う
    (2)市場ニーズに沿ったボリュームで必要床面積を設定する
    (3)達成可能な想定利回りに基づいて工事価格を設定する

    という“逆アプローチ”の手法で不動産開発を進めたことにより、3つある全ての複合施設でオープン入居率100%を見事に達成した。オガールエリア内における民間の従業員数は276名(令和4年度時点)、平成27年に新築移転した役場庁舎に勤務する町職員を含めると500人超にも及ぶ。また、同年度の来街者数も年間80万人を超えており、コロナ禍を経てもなお、駅前の活気は衰えることなく維持されていることがうかがえた。

所感と大府市への反映

 オガールプロジェクトは、公民が連携して公共サービスの提供を行うPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)のスキームが用いられた、当時としては前例のない取組であった。コンサルティングできる企業や人材もなく、全体像を把握していたのがキーマン一人のみであったという点にいささかの危うさも感じた一方で、民間に委ねたからこそ、自治体財政が厳しい状況にあった中で、市場ニーズとコストに対する強い意識を前提とした開発が可能になったとも言える。しかしながら、民間の企業、団体ならば何でも良いということでは決してなく、オガール紫波株式会社の目的の一つが「社業を通じて町の一層の発展と町民の幸せを目指すこと」であるように、「パブリックマインド」を持っているか否かが、何よりも重要である点は言うまでもない。
 人口は紫波町全体で微減傾向にある一方、中央部の3地区では今も増加が続いているほか、紫波中央駅前の地価は前年比で9%の上昇と、街中を実際に歩いてみた際に感じた活気は、客観的な数字としても明確に表れている。「環境や景観に配慮したまちづくりを表現する場にする」という「公民連携基本計画」の理念のもと、「デザイン・ガイドライン」に基づく都市デザインの調整が公共施設や公益施設、住宅施設を含めて総合的に推進されたことも、統一感のある美しい街区の開発を成功に導き、こうした成果の一因になったのではないかと推察するところである。
 新駅開業に伴う乗降客確保策を入口に駅前まちづくりを一から行う中で、街区の統一的なデザイン調整を通じた良好な都市景観整備を念頭に開発が行われたこと、用地の条件ありきではなく、市場ニーズに沿った実現可能な事業計画の立案、推進によって、複数の官民複合施設を完成させ、中でも住民の強い要望があった図書館を設置できたこと、町有地の賃貸料や民間からの税収等で年間約3000万円もの財源を生み出していることなど、地方自治法において自治体に求められている「最少の経費で最大の効果」を、公民連携で見事に達成してみせた国内初にして最大の成功事例として、オガールプロジェクトの取組から学ぶべき点は今も非常に多いと感じた。

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