自民クラブ会派行政調査報告 令和4年7月6日から8日まで

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ページ番号1024156  更新日 2022年8月5日

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令和4年7月6日から8日にかけて、無所属クラブ及び無会派クラブと合同で、青森県八戸市、岩手県陸前高田市及び遠野市を視察しました。

八戸ポータルミュージアムについて【青森県八戸市】

取組の背景

青森県八戸市

 八戸市は、青森県では青森市に次ぐ第二の都市で、水産都市であるとともに、工業都市でもある。また、八戸三社大祭という祭礼行事、種差海岸、八戸の特産品を売りにした観光業にも力を入れている。そうした中で、中心市街地の歩行者通行量が平成に入って大幅に減少し、にぎわいが失われつつあり、これに連動して商業機能も低下し、空き店舗、空き地が増加した。そこで、平成20年7月9日に中心市街地活性化基本計画(計画期間:平成20年度~平成24年度)が策定され、八戸ポータルミュージアムの整備が進められた。

取組の内容

八戸ポータルミュージアム「はっち」の事業 

  1. 会所場づくり 
  2. 貸館事業
  3. 自主事業 
    基本コンセプト「地域の資源を大事に想いながら、新しい魅力を創りだすこと」
    (1)中心市街地の賑わい創出 
    (2)文化芸能活動の振興 
    (3)ものづくりを通した新しい価値の創造 
    (4)八戸の魅力発信、観光を通した地域活性化

注目したポイント

  • 総工費41.3億円のうち、建設時の八戸市負担は8億円。
  • 八戸市が直接事業運営を行っている。
  • 「地域資源を大事に想いながら、まちの新しい魅力を作り出すところ」というコンセプト。当初は山車会館の建設が目的であったが、にぎわいの創出、観光の振興、文化の振興を目的とした複合施設とした。
  • 八戸ポータルミュージアム整備後、周辺に八戸ブックセンター、八戸まちなか広場「マチニワ」をオープンさせるなど、中心市街地活性化に関するインフラ整備が次々と行われた。
  • 八戸市の行政組織に「まちづくり文化スポーツ部」という部があること。

所感及び大府市への反映

  • 地元の歴史や文化、伝統をまちづくりの中心に位置づけていることには共感できる。
  • ポータルミュージアム内の各所に座ってくつろげる場所が多く見られ、隣接する「マチニワ」もそういった場所にもなっている。大府駅、共和駅周辺にはそうした場所が少なく、今後の駅周辺のまちづくりや施設内の内装設計に参考になると思われる。
  • 老朽化に伴う管理が課題とのことであった。会館後10年余りで既に老朽化対策という言葉が出てきている。今後のこうした施設には、メンテナンスが容易なものであることや、ニーズの変化に対応可能なつくりであることが求められると感じた。
  • 「にぎわいがあること」と「生活に便利であること」は、似ているようで異なるコンセプトと感じた。市民にとって、何を一番の目的とするかを共有することが重要。
  • 大府市においても、市内の中心にある商店街の活性化に関する取組については、長年の懸案事項ではあるが、得策が見いだせないのが現状である。本市においては、街中で生活する「居住者」を取り戻すという考え方にシフトし、恵まれた公共機関と道路の利便性などの既存の環境をうまくマッチングさせ、活性化に向けた新たな取組を模索すべきと考える。成功のカギは、 そこに住む人たち(商店街の店主など)の「事業を成功させる」という気概が大事であると強く感じた。

復興について・陸前高田市議会東日本大震災の対応と復興に向けた10年について【岩手県陸前高田市】

 陸前高田市については、二つのテーマで視察を行った。一つ目は「復興について」、執行部から説明を受け、二つ目は「陸前高田市議会東日本大震災の対応と復興に向けた10年について」、市議会から説明を受けた。

 

【1】復興について

陸前高田市における東日本大震災による被害の概況

岩手県陸前高田市

・地震の状況
 発生時間 :平成23年3月11日(金曜日)午後2時46分
 震源域  :岩手県沖から茨城県沖
 地震の規模:マグニチュード9.0
 本市の震度:震度6弱(推定)
 震源の深さ:約24キロメートル

・津波の状況 
 津波浸水高(最大):17.6メートル(高田町字法量)
 津波浸水面積  :13平方キロメートル(市の総面積の5.5パーセント)

・被害の主な状況(令和4 年4月末日時点)
 人的被害状況:1,761 人(死者 1,559 人、行方不明者 202 人) 
 家屋被害状況:8,035世帯 うち津波被害4,065世帯、地震被害3,970世帯
        (平成23年2月28日時点の市内世帯数8,069世帯の99.5パーセント)

・応急仮設住宅等への入居状況
 令和3年3月末をもって応急仮設住宅等から全世帯が転居した。

・被災世帯の再建状況
 令和4年4月末時点で、被災者生活再建支援金(基礎支援金)受給世帯数3,607世帯のうち、3,144世帯(87.2パーセント)が再建した。

陸前高田市震災復興計画の概要

 平成23年12月、震災復興計画を策定。平成27年3月には、現状に即した見直しや新たに必要な事業を追加した震災復興実施計画を策定。(基本構想の目標期間:平成23年度~平成30年度)

復興に向けた取組状況

(1)防潮堤整備事業 
(2)土地区画整理事業・防災集団移転促進事業
(3)被災市街地土地区画整理事業
(4)防災集団移転促進事業 (進捗状況)
(5)災害復興公営住宅等整備事業
(6)復興道路整備事業 (都市計画道路等)
(7)公共施設の整備状況
(8)高田松原津波復興祈念公園 
(9)高田地区中心市街地の形成

被災事業者の再建状況 令和4年4月末時点

被災事業者数 
 商工会会員数 699人
 被災事業者数    604人 
 被災した割合 86.4パーセント
 
被災事業者の再建状況
 営業再開   294     
 未再開    6    
 市外転出   25    
 廃業(脱退) 279     
 計      604 
※震災時の商工会員データを基に算定。
※仮設店舗は、令和3年5月をもって全建物の解体又は譲渡を完了した。

奇跡の一本松の保存

 約7万本の高田松原の松は大半が震災によって流出したが、唯一耐え残ったものを復興の象徴とし、「奇跡の一本松」として後世に受け継ぐため、モニュメントとして保存しており、「奇跡の一本松保存募金」によって整備している。

 

【2】陸前高田市議会東日本大震災の対応と復興に向けた10年について

議会の動き

3月11日 午後2時46分 地震発生
     第1回定例会会期中の3常任委員会開催中。地震とともに委員会を散会した。
     (庁舎内に残った議員、自宅へ戻った議員がいた)
     午後3時26分頃  市街地を津波が襲う(住民の避難誘導時に議員2名が死亡)
3月15日 定例議会最終日 自然閉会(平成23年度の新年度予算案未成立)
3月28日 市立第一中学校校舎にて臨時議会開催(未成立の新度予算等を議決)
6月26日 第2回定例会開会
7月28日 市議会臨時議会開催
8月26日 議長死去に伴う臨時会開催 (議長選出)
9月    市議会議員改選 (統一地方選の特例により6カ月延期した選挙)
9月22日 臨時議会開催
9月26日 第3回定例会
12月9日 第4回定例会(復興計画議決)

議員の動き

・地域も自宅も被災しなかった議員
 どうしていいかわからず、身動きが取れなかった。

・地域が被災した議員
 地区コミュニティの中心となって救援活動に当たった。
 自らが救援活動に当たった。
 消防団としての活動に従事した。

・自らが被災者となった議員
 避難所にて中心的な活動を行った。


 避難をされた市民から、議員が何をやっているか一向に見えない、避難所回りもしないとの声があった。「議会としてチーム」を組まないと理解してもらえない。

議会災害対策行動マニュアルができるまで

 平成23年3月11日に発生した東日本大震災において、陸前高田市は壊滅的な被害を受け、議会としても犠牲者を出した。 市議会として大震災への対応をとってこなかったことが、結果として、初動において議会として有効な議会活動が担えなかったこともあり、大規模災害発生時の指針が必要であるとのことから、策定に着手した。

今後へ向けて

・災害発生時に議会としてやれることは何か。議会としてやるべきことは何か。
  災害発生直後 
  災害調査活動 
  行政は現行制度の中では何ができるかを把握

・議員としてどのような活動が望まれるか 
  地域を優先するか。全市的なものを優先するか。 
  我田引水にならない工夫 
・日頃の活動と、災害想定が肝心

議会と復興対策を考えるときのポイント

 ・議会は事業実施機関ではないこと。
 ・諸制度への理解が不足している。
 ・議論することが復興事業を遅らせるとの危惧がある。
 ・議会と当局では圧倒的な情報量の違いがある。
 ・どこを向いているか。

所管及び大府市への反映

 今回の視察で、被災の話や被災地を見聞きすると本当に悲惨であり、改めて自然災害の脅威を知らされた。
 東日本大震災当時、議員であった福田議長から被災時の議会の対応等について話を聞けたことは、大変貴重なものであった。復興対策については議論が長引くことで復興事業が遅れてしまうのではないかという危惧もあり、適切な質疑ができなかったという反省から出た「議員がもっと勉強する必要がある」という言葉が、特に印象的であった。
 大府市議会では、平成25年に大府市議会危機対応要綱を制定し、これまでに何度も議論を重ね改正をしてきた。また、令和3年度には「大府市議会危機対応要綱に基づく議員の行動マニュアル」に、定例会・臨時会期間中の議会機能の維持、業務の継続に関する内容や感染症による危機発生時の議会運営等々を追加し、「大府市議会業務継続計画」に発展させた。他市町村の議会では、議会の危機対応に際して、特別な会議体を設けている例も見られるが、当市の業務継続計画では、「平時に行っていないことを非常時に行おうとしても難しい」との考えから、既存の会派代表者会議等の会議体を活用して、危機対応及び業務継続に臨むこととした。危機には、大規模地震を始め、水害、感染症など様々なものがあり、その規模や被害も多様である。その時々において適切な対応も異なると考えられるため、市議会の危機対応及び業務継続に当たっては、正副議長の下、会派代表者会議を中心とし、臨機応変に対応していく必要がある。

ビールの里づくり協議会(TKプロジェクト)について【岩手県遠野市】

取組の背景及び目的

岩手県遠野市

 岩手県遠野市は、日本有数のホップの栽培地である。59年の栽培の歴史があり、栽培面積は日本一を誇るが、高齢化や後継者不足により、生産量・生産面積はピーク時の6分の1まで減少している。
 ホップ農業の衰退を解決する挑戦は、キリンビール株式会社と遠野市で2007年から始まった。日本産ホップの将来にわたる持続可能な生産体制を通じた地域活性化を目指すことを目的に、TK(遠野・キリン)プロジェクトを遠野市、遠野ホップ農業協同組合、キリンビール岩手支社(現:北東北支店)で発足し、2015年には「ホップの里からビールの里へ」というビジョンを掲げた。この時点では、行政と農家、大手企業での取組であり、関係者は限定的であったが、掲げたビジョンを実現するには圧倒的にプレイヤーが足りなかったため、地域おこし協力隊制度を活用して移住者を誘致した。「ビールの里」を目指すことで、人口流出問題、観光客の減少、空き家の増加等の地方課題とホップ栽培の衰退の両方を解決していく構想としている。

取組の内容

  1. ホップの生産を行っている農業従事者の現状を把握し、高齢化による後継者不足等を解消するために、遠野市における地域おこし協力隊制度を活用し、農業従事者を遠野市へ呼び込むことに取り組んだ。強みとしては、あらかじめキリンが買い付け先として決まっていることにあると考える。また、ホップ畑は生産して販売に至るまで3年掛かると言われているが、後継者の農家とマッチングさせることにより、新規就農者の収入に対するリスクも回避できる。
  2. 「ビールの里」の象徴的な場所となるビールの醸造所をまち中につくるというプロジェクトにより、レストラン併設型の株式会社遠野醸造が設立された。このプロジェクトは、2016年から遠野市に移住した3名により始められ、自己資金とクラウドファンディングを活用し、行政からの補助なしで設立された。
  3. 遠野市におけるホップ畑とビールの醸造所、街の観光スポットをめぐるビアツーリズムを事業化している。ホップ畑でBBQをして、ビールを飲む。収穫時期には、その場でホップを収穫してビールに入れるという、ここでしかできない体験をする。また、短時間の収穫体験ではかえって農家の負担となるため、しっかり4時間ほど農作業を行うプランとなっているが、魅力的な体験ツアーとして人気が出ている。
  4. ビールの里を体現するイベントとして毎年8月末、「遠野ホップ収穫祭」を開催している。初年度の来場者は2500人であったが、年々来場者も増え、2018年からはキリンだけでなくJR東日本とも連携し、2019年には12000人もの来場者があった。この収穫祭は、地域にホップという宝があることを再認識し、そして、これから「ビールの里」を一緒につくっていく仲間を増やす場として一役買っている。
  5. ホップ栽培の衰退の一因として収穫時の労力不足が挙げられるが、持続可能な農業を目指し、2019年に県の補助金を活用したドイツ式の最新ホップ圃場が完成した。また、ビールのおつまみとして最適なスペイン原産のパドロンを栽培するため、オランダ式の高規格ハウスも完成し、遠野市はスマート農業に取り組んでいる。これらの新ホップ圃場、パドロンハウス、ビアツーリズムを事業として行っているのが2018年2月に設立したBEER EXPERIENCE株式会社である。そして、これらは日本では遠野市でしか挑戦していない農業であり、ビアツーリズムの観光スポットにもなっている。農業を進化させながら、それを観光にも転用している。

今後の課題

 2007年に「TKプロジェクト」を立ち上げ、2016年に移住を受け入れ、着実に「ビールの里」へ歩んでいるように感じられるが、根本課題を解決するため2019年から導入したスマート農業化へのスムーズな移行が課題であると言える。そして、スマート農業化を推し進めるに当たっては、農地の集約化が大きな課題となっている。

所感及び大府市への反映

  • 大府市においても、商工会議所青年部有志が中心となり、大府市の特産品の一つである巨峰を利用した「OBUビール」を販売している。現在、醸造は他市で行われているが、遠野市で立ち上がった株式会社遠野醸造のようにクラウドファンディング等を利用して、大府市内でビール醸造と樽生ビールとして楽しめるような場所の提供ができると良いと思った。大府の特産品としての発展と、立ち寄りスポットの創設を働き掛けてはどうか。
  • 遠野市では、ホップ栽培農業が直面する危機を乗り越えるだけではなく、明確なビジョンのもと、遠野市のビールづくりを起点にした6次産業を体系化し、様々なセクターにメリットや利益をもたらす事業構造を創出している点、観光交流として着実に来場者実績を伸ばしており、ビールを消費するだけではないファンやサポーターなどから多くの支援を受けている。若手のサポーターや移住者なども増えており、遠野市の国産ホップ栽培の次世代を担う人材育成に成功している点、地域が抱える課題を新しい視点と斬新なアイデア、実利的な事業構想などによってブレイクスルーし、更なる可能性へとつなげている点が大いに評価できるものと考える。
  • 大府市議会建設消防委員会では平成26年6月から、「地域農業の活性化について」を年間のテーマとし、市職員を講師とした勉強会、市内農業関係者との意見交換会、市外自治体及び市外農業生産法人への視察調査等により調査を行い、調査研究結果を「大府市への提言」として取りまとめ、平成27年3月3日に報告書を議長に提出し、平成27年3月23日の第1回定例会最終日に報告した。大府市だけではなく日本全国でも農業の衰退や後継者不足に悩む地域は多いが、今回の取組は一つのモデルケースとして着目すべきであり、本市の地域農業の活性化に向けた施策に生かしていくことを強く期待する。

 

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