親和クラブ会派行政調査報告 令和5年7月12日から14日まで

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ページ番号1028244  更新日 2023年9月28日

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令和5年7月12日から14日にかけて、神奈川県藤沢市、東京都足立区、千葉県旭市を視察しました。

 「藤沢SST(Sustainable Smart Town)」について【神奈川県藤沢市】

藤沢SSTについて

神奈川県藤沢市

 この事業は、当該地域から工場閉鎖・撤退を表明していたパナソニックから藤沢市に対して、工場跡地(約19ヘクタール)にエコタウン構想の提案をしたことに端を発する。これに同市が同意し、事業協議が開始された。藤沢市の重要施策の一つである低炭素社会の実現をまちづくりの基本理念に掲げ、パナソニック株式会社の自ら有する創エネ、畜エネ、省エネ技術を核とし、街の再生可能エネルギーも活用した地産地消型スマートタウンを目指し、官民一体のプロジェクトとしてまちづくりに取り組んだ。
 事業主体はあくまでパナソニック株式会社であり、藤沢市は、周辺地域との調整やプロジェクト協議会のアドバイザー参加、区画整理完成後の街区内道路、公園等の施設管理及び周辺道路整備を行う。
 用途地域は第一種住居地域。土地利用の想定としては、低層住宅約600戸、中高層住宅約400戸、合計1,000戸、想定人口を約3,000人と見込んだ。戸建住宅(敷地面積120~130平方メートル)の価格帯は、周辺住宅に比べて1~2割程度高く、管理費(自治会費)として13,000円/月程度を住民が負担している。

取組の内容

  • 藤沢SSTにおける全ての戸建住宅には、太陽光発電システムと蓄電池、さらに家庭で使用する電力をマネジメントするスマートHEMS(※)が備わっている。また、タウン南側道路沿いの下水道用地の上にも太陽光発電設備があり、平時には売電、非常時には非常用コンセントとして活用できる仕組みがある。さらに街中心部にあるコミッティセンターは、非常時には防災拠点として機能することを想定したものとなっている。   
  • CO2削減への取組の一助として、自動車や電動アシスト自転車のシェアリングのシステムを構築している。
  • 住民の自治区への加入は必須であり、住民の声を拾い上げ、個々のサービスやシステムを具現化する企業体組織として「FujisawaSSTマネジメント株式会社」があり、まちづくりのパートナー企業や藤沢市、周辺地域の自治会などとの交渉も担当している。また、住民専用のポータルサイトを運営し、地域サービスやショッピング、モビリティサービスの予約、コミュニティ内での情報交換など、コミュニティの活性化を図る持続可能な体制を構築している。
  • 安心安全対策として、街の出入口、公共の建物、公園の陰、大通りの交差点などを中心に「見守りカメラ」が約50台、「センサー付きLED道路灯や街路灯」も効果的に設置され、「セキュリティコンシェルジュ」が巡回もしている。
  • 将来、この戸建住宅から住み替えを考えるシニア向けのマンションの建設も進められている(2024年秋完成予定)。
  • 神奈川県の「さがみロボット産業特区」の補助金を活用し、自動配送ロボットの実証実験も行っている。
  • その他、完全無電柱化の取組もなされている。

※HEMSとはホームエネルギーマネジメントシステム(Home Energy Management System)の略称。家庭でのエネルギー使用状況を、専用のモニターやパソコン、スマートフォン等に表示することにより、家庭における快適性や省エネルギーを支援するシステムで、空調や照明、家電製品等の 最適な運用を促す。

 

大府市への反映

神奈川県藤沢市

 民間企業の広大な工場跡地と、事業主体がパナソニックという機械工学先端企業であることという前提があればこその藤沢SSTではある。ただし、注目すべきは、このスマートタウンの取組が、脱炭素化という取組のみならず、様々な分野の企業が連携し、セキュリティ、モビリティ、ウェルネス、コミュニティなどのサービスをワンストップで提供できるまちづくりを行っている点である。また、藤沢SSTの運営事業が、単に開発、管理にとどまらず、実証実験を行う場として、あるいはスマートシティ全体の取組自体を販売するというビジネスモデルによって、住民と企業がwin-winの関係を形成している。
 他方、まちづくりの形として、タウンの住民、企業、周辺地域やこの街で働く人たちがコミュニティ活動「Fujisawaまちづくりプロジェクト」によって、周辺地域住民もこの街を行き来し、病院、介護施設、教室、イベント、商業施設を利用しており、新しい街と従来あった街が融合して、安心安全、便利に暮らせる取組がなされている。
 本市でも、とりわけウェルネスバレー地区や新規の区画整理エリアにおいては、こうした取組は事業計画の大いに参考となると考える。

「小中一貫教育(足立区立新田学園)」について【東京都足立区】

取組の背景

東京都足立区

 昭和22年に始まった義務教育の6・3制の仕組みは、当時と比べると、現在の子どもたちの心と身体の両面で成長・発達に変化が見られる中でずれが生じてきている。それがいじめや不登校といった問題の要因の一つであると言われている。そんな時代背景の変化と、足立区内の工場跡地の住宅開発に伴う人口増加が見込まれたときに、区として前向きに取り入れようという動きのあった小中一貫教育校の開設を進めることになった。

取組の内容

  • 新しく区画整理された地域に建設された高層マンション群から通う児童・生徒も多く、その子どもたちの多くは経済的に比較的ゆとりのある家庭であり、基本的生活習慣が身に付いている。また、落ち着いて学習に取り組める要素が備わっているという特徴が見られた。保護者においては新しい考え方やシステムを受け入れる態勢があった。これらの特徴を生かして、子どもたちの基礎学力の定着とともに思考力・判断力の育成、更には力の向上を目指していく。
  • 同じ学園(職員室)に小学部・中学部の教員が在籍していることにより、小学校時代の様子などを連携しやすく、子どもの様子の変化への対応は小中で関わった教員同士のコミュニケーションをとりながら適切に対応するようにしている。
  • 基礎学力の定着への取組としては、教員が一丸となって次の共通行動を実施している。
    (1) めあてと振り返りの徹底
    (2) 放課後補充教室の実施
    (3) 5・6年生定期考査、教科コンテストの実施
    (4) ICT活用
    (5) Qubena(AIドリル)の活用
  • 思春期の子どもたちが、低学年の小学生に対して“思いやり”のある接し方をしたり、見本となるような姿を見せたりすることにより、中学生のお兄さん・お姉さんを自分たちの目標として、あこがれの存在として位置付けられるようにする。そのために、学年ごとにお互いを意識し合いながら、自覚を持って行動できるような関わりを持たせる。
  • 教員の負担をこれ以上増やさないためにも、新しい仕事を1つ増やしたら古い仕事を1つ捨てる。(何が不要かを見直す必要がある。)

課題

  • 5・6年生に対しては業者テストではなく、中学生と同様の教員が作成する定期テストを受けさせる。テスト問題作成の際に気を付けるべき課題は以下のとおり。
    (1) 学生の教員にも相談し、ノウハウの伝授を受ける。
    (2) 学年の教員で作成するテストの教科を振り分ける。1人より2人ずつが理想
    (3) テスト内容に即した授業ができるよう、事前に教員全員でテスト内容を共有する。
  • 小学生と中学生では授業時間や休憩時間が違うため、中学生が授業中の場合は小学生にそのことを理解してもらえるよう伝え、できるだけ静かにするよう指導する。
  • 小学生の運動会に中学生がボランティアとして手伝う機会をつくるなどして交流させることによってお互いへの思いやりや理解を深める努力ができるようにする。

大府市への反映

 本市での不登校児童・生徒の人数も年々増加傾向にある今、小中一貫校で受けられる他学年交流は個々の存在意義の発見や、やりがいを見つける機会にもつながる可能性がある。また、小中一貫教育の現場では、いわゆる「中一ギャップ」と言われているものが起こりにくく、この新田学園でも不登校児童・生徒は極端に少ない。他方で、教員同士の意識改革をするためにも小中一貫校という枠組みは新たな教員同士の関係性づくりのためにも有効であると思われる。
 さらには、現在大府市にある既存の小中学校の一部がマンモス化、教室不足が懸念されており、その対策としても小中一貫校を開設することは一つの案であると考える。
 以上のことから、本市においても小中一貫校の開設を検討する時期にあるのではないかと考える。

「生涯活躍のまち形成事業」について 【千葉県旭市】

背景

千葉県旭市

 平成27年に地方創生先行型交付金を活用し、シニアの移住政策として、旭中央病院周辺での「小さな拠点形成事業」を検討開始したが、国から「生涯活躍のまち構想」が示され、方向性が一致したため、全世代・全員活躍型まちづくりに方向転換し、全世代を対象として「誰もが居場所と役割を持つ『ごちゃまぜ』のコミュニティづくり」等を推進することになった。平成30年6月に有識者会議「旭市生涯活躍のまち推進協議会」が設置された。平成31年1月、事業主体の公募により、イオンタウン株式会社を代表事業者とするグループが選定され、令和3年7月、多世代型交流施設「おひさまテラス」指定管理者にイオンタウン株式会社が指定され、商業施設「イオンタウン旭」建築工事着工した。

取組の内容

  • 事業主体はイオンタウン株式会社、大和ハウス工業株式会社、阿部建設株式会社、株式会社楽天堂(介護事業)の4社で、地方創生推進交付金を活用し、地域コミュニティ創出プログラム事業等を実施している。行政としては多世代交流を柱とした条例の制定や、生涯活躍の拠点として運営しやすい環境づくりに関わっている。
  • 全体イメージとして、行政コミュニティゾーンの旭市多世代交流施設「おひさまテラス」を中心として、健康ゾーン(クリニック、フィットネス等)、みらい広場(イベント開催等)、商業ゾーン(スーパーマーケット、ドラッグストア、物販店等)、居住ゾーン(特別養護老人ホーム、移住者・高齢者向け住宅等)があり、近隣には道の駅季楽里あさひ、旭中央病院がある。
  • エリアマネジメント組織の組成として、プロジェクトを実行する実働部隊の「一般社団法人みらいあさひ」とブレインとなる有識者会議「みらいあさひ協議会」の2つの組織が連携して取り組んでいる。
  • おひさまテラスはイオンタウン株式会社が指定管理者となり、運営している。キッチンスタジオ、クラフトルーム、ミュージックスタジオ、コワーキングスペース等の貸スペース事業のほか、カフェレストラン、利用者が無料で子どもを預けられる保育施設もある。
  • イオンタウン内のデイサービスは周囲の壁を取り払い、見える化することで、身近な雰囲気を醸成している。また、利用者が食事作りに参加し、余った総菜を販売することによって高齢者の生きがいづくりの場を創出している。

課題

 現在、やる気のある働き世代が中心となって事業を進めているが、持続的に推進するためには次世代につなぐことが最大の課題である。

大府市への反映

 まず、大切なのは「何をやるかでなく“誰と”やるか」であると伺い、結局は人が大切なのだと感じた。本市においても、そのような姿勢でまちづくりに取り組む人材の育成が必要だと考える。中心メンバーの方々はもともと旭市出身ではないと伺い、「まちに飛び込む」という姿勢で、行政や地域の方々とインフォーマルな関係性を構築し、運命共同体となって事業を推進している姿勢に感銘を受けた。
 また、事業計画の段階から立ち上げまでの8年間、市役所担当課の職員が異動することなく、またイオンタウン株式会社側もおひさまテラスの担当者に同じ人を任命することで、スムーズに事業が進められたと伺い、参考にするとよいと思った。
 プロジェクトの進め方に関しては、「みらいあさひ協議会」だけでは会議ばかりで事業が進まないと考え、「一般社団法人みらいあさひ」を協議会とは別に設立したという点は、プロジェクトの実行力を高めるやり方として、参考にすべきであろう。

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