親和クラブ会派行政調査報告 令和6年1月23日から25日まで

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ページ番号1030481  更新日 2024年2月22日

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令和6年1月23日から25日にかけて、鹿児島県南九州市、熊本県菊陽町、福岡県那珂川市を視察しました。

 「空き家情報登録制度(空き家バンク)」について【鹿児島県南九州市】

取組の背景

鹿児島県南九州市

 南九州市には、平成30年度時点で空き家が4,550戸あった。生活ガイド.comのサイト情報によると、同市の空き家率23.9%は、全国815市区中766位となっている。
 空き家の有効活用によって、同市への移住・定住促進と地域活性化を目的として、平成22年4月から空き家情報登録制度(空き家バンク)を実施している。

取組の内容

  • 空き家所有者又は仲介業者から空き家バンク登録申請書等届出を受け、現地確認、写真撮影、家屋台帳等で確認をした後、市ウェブサイトや公式LINEで物件情報を提供している。   
  • 毎年、固定資産税の通知に空き家バンクのチラシを同封し、登録を促している。
  • 市が関与するのは、空き家所有者と利用希望者間との連絡調整、物件の情報提供のみで、交渉・契約については当事者間で行っている。
  • トラブル防止のため、空き家所有者には契約時の書類等の作成を、司法書士や不動産業者に依頼することを推奨している。
  • 令和4年度時点での延べ登録件数は248件、延べ成約件数は150件

課題

  • 登録物件のほとんどが売買のみの希望の物件で、賃貸可能物件が少ない。※利用希望者は賃貸希望が多い。
  • 登録可能物件として「居住に耐えうるもの」としてあるが、専門的な知識を要するため、判断が難しい。
  • 個人間で売買・賃貸契約が行われるため、契約内容についてトラブル発生の懸念がある。

大府市への反映

 本市でも同様の制度はあるものの、南九州市のように、こういった空き家バンク事業を民間事業者に業務委託していくことは、効率化の面でも検討されてもいいのではないかと思われる。
 また、この事業に関連して、移住のサポートを行っている地域おこし協力隊、街おこし協力隊といった組織が、既存の住民と移住者との懸け橋となり、自治区活動への参加を促す存在として重要な役割を占めていた。本市でもこういった地域活動の担い手として、希薄化しつつある地域の活性化につなげる組織の立ち上げを促すような取組を検討してみてはどうかと考える。
 

「人口増加」について【熊本県菊陽町】

取組の背景

熊本県菊陽町

 昭和40年代までは農業を中心とした人口1万人強の町だった菊陽町は、昭和48年12月に菊陽町が熊本都市計画区域への編入決定がされたことを受け、民間主導によるミニ開発の乱立を防ぎ、計画的なまちづくりをするために、昭和56年3月に菊陽町基本構想(改)を策定した。
 交通・輸送・情報軸として東西に1本、流通・農業軸、中枢文教軸として南北に2本を入れた「H字型構想」と、まち全体を公園と見立てて緑あふれるまちづくり「ガーデン・サバーブ ふれあいの里」を目指すリーディング・プロジェクト推進事業をまちづくりの基本として、現在まで一貫してベッドタウンではなく仕事と生活がここで完結するまち、「生活都市」の実現を目指すまちづくりを進めてきた。
 土地区画整理や生活道路など徹底してインフラを整備したことに加え、熊本市に隣接し、阿蘇くまもと空港や駅が町内あるといった交通アクセスの利便性が功を奏し、県内第1位の人口増加率となり町では全国で第10位の人口となった。
 さらに、豊富な水資源により大量に水が必要となる世界的な半導体製造関連企業が進出している。

取組の内容

  • 昭和55年から3つの大規模な土地区画整理事業を行った。町内中心の住宅地域である菊陽第一土地区画整理事業、北東部の工業地域である菊陽第二土地区画整理事業、熊本市との市境の住宅地域に県営団地が開発された武蔵ヶ丘東ニュータウン土地区画整理事業である。
  • 光の森防災広場や防災センターの整備、地区防災計画策定支援など、平成24年の熊本広域大水害や平成28年に発生した熊本地震の教訓をもとに地域防災力の一層の強化が行われている。令和5年には災害時の避難拠点として菊陽町総合体育館が完成した。また、交番の誘致など安全・安心なまちづくりも推進している。
  • 誘致における財政支援は他自治体と特に変わらないにもかかわらず、交通アクセスの良さ、豊富な水資源を持つという立地優位性を生かした企業誘致を行ってきた。平成4年の県によるセミコンテクノパークの開発により、平成13年にソニーセミコンダクタ九州(現ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング)が進出し、平成30年の第二原水工業団地の開発によりTSMC(JASM)という世界的な半導体製造企業の進出を呼び込んだ。他にも富士フイルム九州(現富士フイルムマテリアルマニュファクチャリング)、重光産業(熊本ラーメンの老舗の本社)など誘致している。
  • 子ども医療費助成(無償)事業を令和4年4月には高校3年生まで拡大、給食費・副食費は令和5年度から一部無償化など熊本市の隣ということで住居として選んでもらうために近隣市町の一歩先を目指した子育て支援の推進も行っている。
  • 今後は圃場整備した農地をしっかりと守りつつ、新たな土地区画整理事業による住環境の整備やJR新駅の設置、アーバンスポーツパークを含む総合運動公園の整備、道路拡張・新設・延長による渋滞解消、多文化共生の取組を通して、これから予測される問題を解決する取組を行っていく。
  • 市内の幹線道路整備は、「H字型構想」から「田字型構想」へと変え、更に利便性の向上を推進していく。

課題

 TSMCの進出により、更なる人口増加とそれに伴う地価の高騰、住宅の不足、交通渋滞対策が課題としていた。また、外国人の増加による影響も対策が必要であるとのことだった。 

大府市への反映

 菊陽町は、30㎢代の面積、町制約50年、海のない町、大都市の隣、かつては農業を中心とした町など、大府市と共通する部分が多い。大府市も立地適正化計画を策定しているが、それだけではなく、民間の乱開発を事前に防ぎ、数十年後を見据えたまちづくりのための整備が必要だと考える。
 また、大府市はベッドタウンのイメージが強いが、菊陽町同様「生活都市」を目指すべく、ウェルネスバレー地区を始めとした新産業の創出を推進していく必要がある。
 菊陽町は、交通渋滞の悪化を防ぐ施策として、曲がらない道を目指して道路拡張・新設・延長を行っている。大府市としても、渋滞の起点は右折する場所、車線が減る場所に多いため、曲がらずに幹線道路同士がつながるよう整備する必要があると考える。
 また、菊陽町は1,400名が通勤バスを利用しており、実質1,400台の通勤車が削減となっている。大府市も大規模な工場が多いことから企業と連携して通勤に車を利用する人数を削減する取組を検討することも必要である。
 TSMCの進出という100年に一度の好契機を生かし、スポーツや観光に力を入れ、2026年に九州最大規模のアーバンスポーツパークを開業し、総合運動公園が整備される。国の社会資本整備総合交付金で事業費約25億円のうち4割を充てている。
 大府市も様々な都市や施設の整備を進めているが、国の交付金をうまく活用し、大規模で魅力ある菊陽町のような取組は大いに参考とされたい。

「活力あるまちづくり促進事業」について 【福岡県那珂川市】

取組の背景

福岡県那珂川市

 那珂川市は、多くの他市町同様、人口減少、少子高齢化・核家族化、価値観の多様化等、社会環境の変化が進んでいる。そこで、将来にわたって「活力あるまちづくり」をどのように進めていくか、「活力あるまちづくり」への興味・関心を促し、実践していくために、令和元年度から「活力あるまちづくり促進事業」に取り組むこととなった。

取組の内容

 令和元年7月22日から「活力あるまちづくり推進事業」をスタートした。“まち活UPなかがわ”というキャッチフレーズで、那珂川市内で「活動」しようと思っている人、既に「活動」している人、那珂川市のことを市内に発信していきたい人などを応援(サポート)する事業である。「歴史・文化・土地・お金・仕事・ひと」は切り離すことのできない関係性であり、何がまちの活力になるのかを考え、「人」を中心に置いたまちの活力維持・向上に取り組むことを主たる方針に据えた。 
 具体的には、まちづくりの専門家と連携し、彼らを中心にセミナーやワークショップ等の企画や、まちづくり人材ファイルの作成、メディアを活用した広報活動などを通じて、この事業に取り組もうとする人を募り、その人たちがどうすればその思いを実現できるかを一緒に検討、サポートした。
 この事業は委託事業で、主な支出はまちづくりコーディネーター等の人件費である。第1期、第2期と5年間に渡って推進してきたが、いったん事業としては終了し、今後はいま継続している事業が引き続き自走していけるようバックアップする位置付けとなる。
 

大府市への反映

 大府市には市民活動支援拠点としてコラビアがあり、指定管理者を通じて相談、コーディネート、マッチング、自立支援などの市民活動支援の取組を行っている。
 今回の那珂川市の取組で「市民ニーズの発掘」という施策、具体的にはヒアリングシートなどでアウトリーチ的に個々の地域活動への思いを発掘するという試みは本市でも参考になるのではないか。
 また、10代の子どもたちに焦点を当て、自分たちのやりたいことを実現するというティーンズプロジェクトという取組は、若い人たちに地域に愛着を持たせ、そのことで、活力あるまちづくりを次世代に継承するという効果が期待できるのではないかとか感じた。
 余談ではあるが、この事業を担当する「地域づくり課」は、インフラ整備を行う都市整備部に組織されていた。都市整備は、ハードとソフトの両面で取り組んでいくという同市の姿勢の表れであるとのこと、興味深く拝聴した。

追録

 上記、3市町の視察報告は以上ですが、その合間で、「知覧特攻平和会館」(鹿児島県南九州市)と「熊本県防災センター」(熊本県熊本市)を見学してまいりましたので、その概要を以下に報告いたします。

「知覧特攻平和会館」【鹿児島県南九州市】

 第二次世界大戦末期の沖縄戦において、当時の価値観としても常軌を逸した特攻という軍事作戦で、若くして命を落とした特攻隊員たちの歴史を後世の記憶に深く残していくために、出撃基地であった知覧の地に建設されたという。
 館内の展示の大半は、そうした特攻隊員たちの遺品と遺影の展示である。遺書に記された潔さの裏側に、どれだけの悲しみ、恐怖、悔しさがあったかのかに思いを巡らせるだけでも、胸が苦しくなる。
 どのような経緯でこの軍事作戦が実行されたのか、特攻隊員たちを送り出す地域の方々や家族の思いはどうだったのか、そして、彼らが思い描いた平和とはどのようなものだったのか、平和を願う現世に生きる日本人として、一度は見ておく価値のある施設である。
 

「熊本県防災センター 展示・学習室」【熊本県熊本市】

熊本県防災センター

 熊本県防災センターは、平成28年の熊本地震及び令和2年7月の豪雨等の経験を踏まえた災害対応拠点として建設された。その1階に県内で起きた過去の大規模災害での経験や災害対応などを学ぶことができる施設として展示・学習室ができた。
 展示・学習室は、熊本地震や令和2年7月豪雨など熊本県の過去の自然災害による被害状況や、災害発生のメカニズム、防災の取組などを、展示パネルやプロジェクションマッピング、VRなどにより地震と風水害が起きたときの対応の方法を体験しながら学ぶことができる。
 研修・閲覧コーナーでは、防災講話の受講や防災に関する資料や防災グッズなどの閲覧ができるようになっている。

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