市民クラブ会派行政調査報告 令和4年7月11日から13日まで
令和4年7月11日から13日にかけて、岩手県奥州市、福島県会津若松市及び茨城県ひたちなか市を視察しました。
議会改革について【岩手県奥州市】
取り組んだ経緯・背景
平成21年9月に「奥州市議会基本条例」を制定し、令和元年から令和3年までに評価検証を行い、令和3年12月に必要な改正を行った。
議会改革を具現化するために、議会内組織をフル活用し、議会改革に取り組んでいる。
議会改革の推進体制:議会運営委員会・議会改革検討委員会・議会広報広聴委員会・市政調査会
取組の内容と現在の状況及び成果
1.機能強化の取組について
(1) 議長マニフェスト
議会改革では、今任期(令和4年度)から議長就任希望者による所信表明が議場で行われるようになり、それを詳しくまとめた議長マニフェストと工程表も公表されるようになった。今任期の議長マニフェスト実行計画は、令和7年度までに全て決着するように立てられている。
今任期の議長マニフェストでは以下のことが挙げられている。
- 奥州市議会の「見える化」の推進に努めます。
- 広報・広聴活動の充実・強化を図ります。
- 政策立案・政策提言サイクルの充実・強化を図ります。
- 議員間討議の制度化による十分な審議と市民への説明責任に努めます。
- 議員の成り手不足解消の調査研究と対策の実施、主権者教育の推進に努めます。
(2)「奥州市議会業務継続計画(議会BCP)」の策定
(3) 政策決議提案による提言書1 令和元年度に決議した提案
提出前から当局との事前協議などもしていたことにより、すぐに施策への反映が検討され成果をもたらした。
- 公共交通施策に関する政策提言書(総務常任委員会)
例 県内初の任意団体による自家用有償旅客運送の導入 - 農業振興及び地域6次産業化の推進に関する政策提言書(産業経済常任委員会)
例 学校給食における市内産食材の利用率向上 - 交通安全対策に関する提言書(建設環境常任委員会)
例 高齢ドライバー運転技術講習会の実施
(4) 政策決議提案による提言書2 令和3年度に決議した提案
- 将来の公共施設の在り方に関する政策提言書(総務常任委員会)
- 地域おこし協力隊制度を活用した産業振興に関する政策提言書(産業経済常任委員会)
- SDGsの実現及び環境問題に関する政策提言書(建設環境常任委員会)
- ICTを活用した学校教育に関する政策提言書(教育厚生常任委員会)
例 政策提言書における議会DXの取組
2.情報共有の取組
- 会議の公開
- 政務活動費
- 多様な情報発信(市議会だよりのリニューアル・SNS・FM放送・議員による発信)
3.住民参画の取組
- 議会の傍聴
- 市民との対話「市民と議員の懇談会」4つの常任委員会ごとにテーマを設け、ワールド・カフェ形式のワークショップで市民との対話を重視した取組
平成22年度から行った市民と議員の懇談会では、開催日程、内容、進行方法に課題が挙げられ、平成30年度の調査・研究により懇談会開催方式の見直しを行った。【学んだら即実践】
ワールド・カフェの形式による意見交換の効果として、参加者の満足度が高く、議員の活動につなげられる。
4.タブレットを活用した議会運営(議会ICT)
- タブレット導入の経緯
平成29年度 導入と定例会での併用開始
平成30年度~会議システムの本格実施
令和元年7月 タブレット更新 - オンライン会議の検討について
令和2年5月 コロナ禍におけるタブレットを活用した非参集型会議の検討
令和2年10月 オンライン行政視察を「Zoom」にて実施
令和2年12月14日 「オンライン本会議の実現に必要となる地方自治法改正を求める意見書」を提出
地方から政治を変える取組を推進している早稲田大学マニフェスト研究所は、令和4年6月1日「議会改革度調査2021」ランキングトップ300を発表し、全国で3位となった。機能強化の取組、情報共有の取組、住民参画の取組で、政策を提案することが評価された。
所感・大府市への反映
奥州市議会の行っている政策提言書は、大府市でも常任委員会で行っている調査研究後の報告書(提言書)と同じであると思った。しかし、執行部が計画を立てる段階の前から、事前協議などを行うことで、すぐに施策に盛り込まれ成果を出している。スピード感があると感じた。
タブレットを活用した議会運営を早い段階から検討を進め、十分活用されている。
ペーパーレス化はもちろんのこと、災害時やコロナ禍のような場合でも活動が速やかにできることがICT導入の本来の意義になると思う。大府市議会においては、次期のタブレット更新までに、ひとつでも多くの取組ができるような運用にしていくことが重要課題である。
あいづっこ宣言と子どもの教育について【福島県会津若松市】
取り組んだ経緯
平成13年頃、大人社会の規範意識の低下や地域連帯意識の希薄化、家庭教育力の低下などが原因で、「青少年の心の荒廃」が社会問題となっていた。子どもたちの豊かな心を育んでいくことが急務となり、会津に伝わる什の掟「ならぬことはならぬ」の精神を踏まえ、子どもから大人まで会津若松市に住む全ての人を対象に、市民一人ひとりがそれぞれの立場から行動していくため共通の行動指針「青少年の心を育てる市民行動プランあいづっこ宣言」が策定された。
「あいづっこ宣言」を青少年健全育成の柱として会津若松市青少年市民会議(会長:市長)を推進母体として事業展開を図っている。
あいづっこ宣言
一、人をいたわります
二、ありがとう ごめんなさいを言います
三、がまんします
四、卑怯なふるまいをしません
五、会津を誇り 年上を敬います
六、夢に向かってがんばります
やってはならぬ・やらねばならぬ・ならぬことはならぬものです
取組の内容と現在の状況
子どもへの取組
- あいづっこ宣言暗唱合格証の授与
あいづっこ宣言に親しんでもらうために、市内小学1年生を対象にあいづっこ宣言を暗唱できた児童への授与(令和3年度905名) - ポケット版リーフの配布
中学1年生に改めて宣言に触れ、実践してもらうため(令和3年度992名)
家庭への取組
- あいづっこ宣言家庭教育講座
就学時健診に合わせて講座やリーフレットを活用した研修会を行い、家庭で理解を深めてもらうため - あいづっこ宣言絵手紙コンクールの実施
あいづっこ宣言の中から頑張っていることを選んで絵手紙にする
地域への取組
- 市民総ぐるみ朝のあいさつ「おはよう」運動の実施
毎年2~3月、4月、11月 - 立て看板の設置
市内18基設置 ※大人への取組 - 民間企業への普及啓発事業
啓発用パネルを贈呈、従業員への周知と大人に対する普及(令和3年度3社総数20社)
その他の取組
- あいづっこ宣言表彰の実施
あいづっこ宣言の推進に積極的に取り組んだ団体や個人 - 広報紙やHPでの広報
- 地区青少年への活動
- あいづっこ宣言策定20周年記念事業
成果・課題
学校、家庭、地域住民が連携協力し、一丸となって普及活動に務めてきたことで、多くの市民に浸透してきた。また、青少年健全育成の醸成が図られている。「あいづっこ宣言」を意識する子どもが増えており、積極的にあいさつをする児童生徒が増えてきている。また、会津若松警察署管内の少年補導状況からも、刑法犯少年の数が減少している。
浸透を図るとともに、青少年の問題は大人の問題であることから、より一層大人への普及促進を図るために、民間企業への普及啓発事業を重点的に継続して取り組んでいく。
課題と今後の取組
- 「あいづっこ宣言表彰」により宣言推進のための優れた活動を広く周知し理解を深めてもらう
- 民間企業へ普及啓発として、「あいづっこ宣言」リーフレットの従業員への配布、宣言パネルの掲示の依頼
- 事業所へ直接訪問し、啓発用チラシの配布の実施
- 教育委員会として、「あいづっこ宣言出前講座」の実施
- 動画配信を始めとする情報発信
- 各地区青少年育成推進協議会と協力し、街頭啓発の実施等を継続していくこと
所感・大府市への反映
小学1年生を対象にあいづっこ宣言に親しんでもらうために、暗唱させ合格証を授与することでやる気を起こさせていると思った。
子どもには「このような会津人になります」、大人には「このような会津人を育てます」と、それぞれの役割を持たせ、重要なことに絞ってわかりやすく、唱えやすく、訴えやすくなっていることで、誰もが親しみやすく役割を果たしやすくなっているものであると思う。
あいづっこ宣言の所管は、教育委員会教育総務課あいづっこ育成推進室となっているが、青少年健全育成や成人式等も担っている。また、会津若松市青少年市民会議のメンバーとなっている区長会の所管である環境生活課や防犯の所管である危機管理課とも横の連携が取れていると感じた。
大府市には、大府市幼保児小中連携教育の指針(きらきら)が策定されている。「きらきら10」があいづっこ宣言と同じ役割を果たしていると思うが、本市では子どもたちに向けたものになっていると感じる。子どもやその家庭だけでなく、多くの市民にも取組を知って理解されることで、地域で子どもたちを育てることにつながるのではないかと思う。機会があるごとに、周知していくべきと考える。
総合運動公園の整備について、同運営について【茨城県ひたちなか市】
取り組んだ経緯
総合運動公園用地は、戦前に日本陸軍用地の水戸対地射爆撃場であり、戦後は在日米軍の射爆撃場として使用されていた土地であった。
昭和56年11月に国有財産中央審議会において「水戸対地射爆撃場返還国有地の処理大綱」が決定され、総合運動公園敷地が確定したことにより、旧勝田市では、住むまち、働くまち、潤いのあるまちとして、10万都市「勝田」のスポーツ・レクレーション活動の拠点として、総合的な運動機能を備えた公園を整備し、市民のふれあいと健康づくりを助長することを目的として、総合運動公園が整備された。
取組の内容と現在の状況
- 事業内容
昭和63年8月に「勝田市総合運動公園整備基本計画」を策定、市制40周年の記念事業として位置付け、昭和63年度から平成9年度まで10年間の継続計画とした。 - 管理運営
総合運動公園の管理は、公益財団法人ひたちなか市生活・文化・スポーツ公社へ委託し、5年に一度、指定管理者の募集を実施 - 整備内容
- 市民球場
・市民球場総工費 29億4,620万円
・工事期間 昭和63年度から平成2年度まで
・スコアボード改修工事(平成28年度実施)工事費 1億4,958万円 - 総合体育館
・地下1階地上4階
・総合体育館総工費 47億5,256万円
・工事期間 平成6年度から平成9年度まで
・LED照明器具賃貸借(令和3年度実施)年間ランニングコストの経費削減のため - 陸上競技場
・陸上競技場総工費 16億9,213万円
・工事期間 平成7年度から平成8年度まで
・施設改修
陸上競技場インフィールド等改修工事(平成28年度実施) 9,492万1千円
陸上競技場改修工事(令和3年度実施)8,360万円 - テニスコート
・テニスコート総工費 2億5,328万円
・工事期間 平成3年度
・施設改修
総合運動公園テニスコート改修(平成27年度実施)1,350万円
総合運動公園テニスコートC面改修工事(令和元年度実施)3,065万7千円 - レクレーション広場
・レクレーション広場総工費 3億5,664万円
・工事期間 平成4年度から平成5年度まで
・施設改修
総合運動公園レクレーション広場人工芝張替工事(平成27年度実施)5,140万8千円 - スポーツ広場
・スポーツ広場総工費 8,108万円
・工事期間 平成7年度から平成9年度まで - 事業費
国庫補助金は、テニスコートの4,000万円のみで、残りは一般財源と地方債 - 全体事業費
100億8,189万円 - これまでの施設回収額(総合運動公園のみ)
8億981万9千円
成果・課題と今後の取組
令和元年度より新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、利用者数は減少しているが、総合運動公園における年間利用者数は、約40万人強で推移している。
スポーツ協会(44加盟団体)やスポーツ少年団(74団体)には、多くの団体・会員が加盟しており、コミュニティでのスポーツ大会やスポーツの推進に寄与する活動が行われている。それらの団体が運動公園を利用することで、幅広い世代がスポーツを楽しみ、健康で生き生きと交流できる環境が形成されている。
課題は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、利用者が減ったため、これまで利用していた方や各団体を呼び戻すことや、新たな利用者の発掘など、総合運動公園のPRを行い、更に利用を促進しなければならない。
経年劣化が進んでいるスポーツ施設には、計画的な改修が必要となり、全国レベルの大会やプロスポーツチームの誘致のためにも、魅力あるスポーツ施設としての維持管理に努めなければならない。施設の長寿命化に取り組むとともに、利用状況やニーズ等を踏まえ、在り方や利活用について検討する必要がある。
コロナ禍による施設利用者の減少について、プロスポーツや企業スポーツによる観戦型事業との連携を行い、また参加型事業も進め、施設利用者数の増加につなげていきたいと考えている。
所感・大府市への反映
とても規模が大きくて驚いた。そもそも広大な国有地があったので、これだけの施設が集積できたと思う。また、子どもたちがプロの選手を観ることができる機会があるのは、よい取組であると思う。
大府市では、体育館やグラウンドがあり、市民球場の整備を行っているが、集積するにはかなりハードルが高く感じる。
しかし、戦前からスポーツのまちとして発展し、また健康都市を標榜する大府市としては、市民の健康に寄与できる施設は必要だと考える。集積はできないと思うが、市民が利用しやすく親しみやすい運動施設の整備は、進めていくべきと考える。
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