無所属クラブ会派行政調査報告 令和5年7月10日から12日まで

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ページ番号1028180  更新日 2023年9月26日

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令和5年7月10日から12日にかけて、公明党と合同で、長野県木曽郡王滝村、諏訪郡富士見町及び東京都清瀬市を視察しました。

愛知用水の源流における現状と課題について【長野県木曽郡王滝村】

長野県木曽郡王滝村

調査内容

 下出謙介議長からご挨拶を頂戴した後、経済産業課長及び企画・観光推進室長による説明があり、質疑応答では越原道廣村長にも直接ご対応いただけるという、大変貴重な機会となった。また、村役場で説明を受けた後、牧尾ダムを訪れ、これまでの歴史や現況等についてもお話を伺った。

  1. 森林・林業の現状について
     岐阜県と境を接し、御嶽山の南麓に位置する王滝村は、大府市の9倍を超える広大な面積の約96%を山林が占めている。村のほぼ中央を東西に貫く王滝川の下流に建設された牧尾ダムは、1961年(昭和36年)の完成以降、愛知用水の水源施設として私たちの暮らしと産業を長年支え続けている“命の水甕”である。大府市を含む下流自治体とは、様々な交流の取組が続けられてきており、例えば、2010年(平成22年)には、王滝村と大府市職員互助会との間で「牧尾ダム水源の森づくりパートナー協定」が結ばれ、職員だけでなく市民も加わった森林整備の活動などが継続的に行われてきた。
     村の森林面積は29,752haで、このうち87%の25,887haは国有林であり、残り13%の3,865haが民有林となっている。民有林のうち、集落や団体、個人所有の私有林は3割で、残りの7割は県又は村が所有する公有林である。これら民有林に占める人工林の面積は1,677haで、ヒノキとカラマツが主体となっている。民有林の約2割に相当する779.6haは保安林に指定されており、このうち88.3%(688.19ha)が水源涵養保安林である。
     平成15年に、愛知中部水道企業団と木曽広域連合との間で「『水源の森』森林整備協定」が締結され、下流域の「水道水源環境保全基金」及び上流域の「木曽森林保全基金」から、森林所有者の間伐経費負担に対する助成が行われている。さらに、上述の「牧尾ダム水源の森づくりパートナー協定」を始め、多くの企業、団体、NPO法人との間で協定や覚書が交わされており、森林整備費用の助成に加え、ボランティア作業の提供といった参画も継続的に実施されている。
  2. 森林・林業の課題と今後について
     ヒノキ、カラマツ、アカマツなどは間伐が不可欠であり、これらの樹種が多くを占める王滝村では、高度な水源涵養機能を有する森林づくりが急務とされている。したがって、天然広葉樹の育成を通じた針広混交林への誘導が課題とのことである。
     平成25年8月には、「木曽谷流域森林整備推進協定」が締結され、民有林と国有林の連携を進めることが目指されている。この協定により、路網整備や森林の集約化などを通じた施業の合理化を図ることで、持続可能な森林経営の推進にも取り組んでいる。効率的な間伐を行うには、施業の集約化や森林経営計画の作成を積極的に進める必要があるが、所有者不明の森林や不在村所有者がその実現を難しくしている実情もあることから、このハードルを解消するため、そうした森林の土地情報を整理し、林地台帳を整備していくことが合わせて求められている。
     また、路網密度の低さも、施業の集約化と生産コスト低減を図る上での障害となっている。林業専用道や森林作業道の整備促進はもちろんのこと、高性能機械の導入による効率化や、ドローン、GIS活用といったスマート林業の普及促進も重要な課題である。しなしながら、林業の基盤整備を進めるにも担い手が不可欠であり、路網の開設や高性能林業機械、施業の集約化など、作業システム全般で高度な技術者の養成、確保もまた急務である。
     企業や自治体などの取組によって削減、吸収された温室効果ガスを売買可能なクレジットとして国が認証するJクレジット制度については、長野県の認証取得モデルとして王滝村と根羽村が選ばれ、現在、国に申請を行っているとのことであった。300ha分を申請しており、認証されれば令和6年度から販売したいとの話であったが、最近では認証そのものも厳しくなっているとの実情も明かされた。

所感と大府市への反映

 原点から整理して考えていかなければ、もはや森林が駄目になってしまうという強い危機感が下出議長の口から強く語られたが、村の人口減少が急速に進む中での深刻なマンパワー不足は今後も一層拍車がかかることが予想され、施業の集約化や広域化、スマート林業推進といった効率化の対応だけでは、到底追いつかなくなる可能性が高い。王滝村における森林経営の持続可能性は、特にマンパワーの面で極めて危機的な局面にあり、国産木材に対する需要喚起を通じた採算性の向上と、市場競争力の確保は喫緊の課題であるとともに、水源の森の保全・育成が、私たち市民の暮らしの持続可能性にとってもいかに大切であるかという意識を、これまで以上に強く次の世代へとつないでいかなければならない。
 大府市は令和5年7月1日、王滝村及び木曽町と「水源の森林の保全・育成に関する連携協定」を締結し、「木材の利用及び利用促進、市民への啓発などを通じ、市民の水源の森林の保全・育成」に取り組むとしているが、今後は一人一人の市民だけでなく、市内企業、団体などを含む、更に幅広いコミットを獲得しつつ、より強力なバックアップを早急に検討する必要があり、そうした取組を強化していく中でも、利用期を迎えている多くの森林の需要喚起については特に、従前とは比較にならない異次元のバックアップが求められるものと考える。
 また、Jクレジット制度についても、無所属クラブとして令和5年1月26日に実施した木曽町での行政調査の報告書にも記したとおり、王滝村が国の認証を取得したあかつきには、「市内の企業・団体等におけるゼロカーボンの推進において、その活用が積極的に図られるよう、市が旗振り役となること」を、改めて強く期待するものである。

「新規就農者パッケージ」支援制度について【長野県富士見町】

長野県富士見町

調査内容

 牛山基樹議長のご挨拶の後、産業課営農推進係の係長及び係員の説明を受けたほか、「新規就農者支援パッケージ制度」を利用して新規就農した若手農業者のもとを訪問し、夏秋イチゴが栽培されているハウスを現地見学させていただいた。

  1. 制度導入の背景について
     富士見町も他の多くの自治体と同じく人口減少が続いており、令和4年にはついに1万4,000人を割り込んだ。高齢化率も平成22年には30%を突破しており、担い手不足の一層の深刻化が懸念されていたほか、町内に点在する小面積の農地の多くは作業負荷が大きく、親から農業を継承する子が非常に少ないという実情もまた、耕作放棄地の増加が危惧された要因の一つである。農地の6割強を占めている水田で耕作放棄地が増えると、多面的機能の喪失とともに景観も損なわれ、また、下流地域で災害発生リスクの増大にもつながりかねないことから、新たな農業の担い手として新規就農者を確保する必要性が生じたものである。
     農業を始めるに当たっては、初期投資や生活費などで約500万円の資金が必要であり、国のアンケート調査でも、農業の新規参入には栽培技術、住居、農地、機械の取得が高い壁であることが分かっている。そこで、栽培技術などのノウハウを教える指導者、生活の拠点となる住居、生産の基盤となる農地・機械の3つを一体的に支援することとしたのが、平成22年4月に導入された「新規就農者支援パッケージ制度」である。
  2. 取組の成果と今後の課題について
     支援パッケージのうち、指導者については、就農希望者には事前研修を受けてもらった後、県の制度である「里親研修(農家研修)」を行ってもらうというもので、期間は2年ほどとなる。栽培技術だけでなく農業経営も学ぶことができ、「里親」は最も相性がよい登録農家を紹介しているとのことだ。住居については、経営が安定するまでの間の生活拠点として、民間アパートや公営住宅を紹介し、必要に応じて戸建て住宅の賃貸あるいは売買を案内する場合もあるという。農地は、「里親」と町が相談しながら栽培品目に適した農地を賃貸借で提供するほか、施設と機械についても、「農機具バンク」に登録されている中から選ぶことができるとのことである。また、平成23年から、所得がない研修期間と独立1年目の新規就農者に対して、年48万円の補助金を町単独で支給していたが、国の補助事業が活用できるようになった平成24年以降は、年齢制限等で要件が合わない後継者や、対象とならない定年帰農者に町単で補助を行っている。
     平成9年から平成21年までの13年間、新規就農者は13組であったものが、制度を導入した平成22年から令和4年までの13年間では、実に68組もの新規就農者が誕生しており、内訳は新規独立者38組、後継者10名、定年帰農者7名、法人就農者13名となっている。現在、町の「里親」登録者8名のうち6名を新規独立者が占めており、次の担い手を育成するサイクルとしても、この制度がしっかりと機能しつつあることが伺えた。一方、新規独立者の「里親」登録品目は、夏秋イチゴ(施設)とキク(施設・露地)の2種にとどまっており、引き続き新規就農希望者の受け皿となる農業法人の誘致を進めるとともに、農業大学校等の活用も課題であるとのことであった。

所感と大府市への反映

 制度開始前の同じ年数と比較して5倍以上の実績を叩き出したことは、まさに圧巻の一言であるが、これほどまでの成果を上げられた最大の要因は、新規就農希望者を厳格に見極め、農業適性がある人にだけ支援を行ってきた点にある。また、農業適性がある人であったとしても、就農5年後の所得目標が300万円以下の場合は支援しないとしている点からも、この制度の“支援”の本質が、町の重要な産業である農業の担い手として、いかに良い人材を確保するかという“投資戦略”にあることがわかる。まずもって農業適性や農業者としての志の高さが試され、そのハードルを乗り越えた上で初めて支援を受けられる仕組みとなっているからこそ、きちんと生計を立てられる農業という最も大切な要素と両立した成果として、数的な実績にも如実に現れていると言える。
 一方で、中山間地域において条件の良い農地は限られているため、新規独立者には水はけの悪い水田をあっせんせざるを得ないという実情があり、そうした水田を転作している農業者にとって、転作交付金が厳格化されることで営農の継続が厳しくなるおそれがある点も、現今の重い課題となっている。新規就農者の作業マナーに対する苦情や、所在する地区とのコミュニケーション不足に起因するトラブルなども、土地を貸してくれている所有者の意向を翻意させかねない要因として所管課の頭を悩ませており、担い手の確保及び定着、農地のマッチング、地域の理解という3つの要素をバランスよく成立させながら運用を図る難しさを、強く感じさせられた。
 地形や広さ等、条件のいい優良農地を多く抱える大府市で同様の取組を行うとした場合、それぞれの品目の栽培適地をあらかじめ踏まえながら、より大きな規模での運用があり得ると考えられる一方、住宅地に隣接している場所も少なくないことから、近隣とのコミュニケーションという観点において、富士見町とはまた異なる気配り、目配りの必要性が想定されよう。

紙おむつのサブスク「手ぶら登園」について【東京都清瀬市】

東京都清瀬市

調査内容

 福祉保健常任委員長より歓迎のご挨拶を頂戴した後、福祉部子育て支援課の課長より説明を受けた。その後、市議会公明党の皆さんから歓迎を受け、市議会本会議場のご案内をいただいた。

  1. 制度導入の背景について
     清瀬市は、平成22年の国勢調査において、高齢化率が多摩地域26市のうち1位となるなど、深刻な高齢化が続いてきた。こうした状況に対処すべく、平成29年より、妊婦及び就学前までの児童とその家族に対し、妊娠期から出産・子育て期にわたる切れ目のない支援を目指した、清瀬市版ネウボラ「スマイルベビーきよせ」事業を行うなど「子育てしやすいまち」の実現に向けた取組を展開してきた。
     渋谷桂司市長は、令和4年4月よりその職に就いているが、市内保育園に子どもを預ける子育て当事者であり、市議会議員として活動していた頃から、子育て世代の負担軽減について活発な提起を行い、施策の実現につなげてきた。例えば、平成30年9月の市議会定例会本会議一般質問では、保育園における紙おむつの持ち帰りによる保護者の負担を解消すべく、使用済み紙おむつを保育園で廃棄する提案を行っている。これを踏まえ、市は平成31年度から全ての公立保育園で使用済み紙おむつを園で廃棄することとしている。
     更なる子育て世代の負担軽減を推進する目的で、令和4年3月の市議会定例会本会議一般質問では、先行して制度が導入されていた渋谷区などの事例も踏まえ、「保育園での手ぶら登園の環境整備ができないか」という趣旨の提案が行われた。これに先行する形で、同年2月頃から同制度の検討が急ピッチで進められ、同年4月1日より、公立保育園3園において、紙おむつとおしりふきの定額サービス「手ぶら登園」として、2カ月間の無料期間を経て、本格的に導入がなされたものである。
  2. サービス内容と費用負担等について
     本制度は、BABY JOB株式会社が提供する紙おむつとおしりふきの定額サービス「手ぶら登園」を令和4年4月より市内公立保育園3園において導入しているもので、複数ある紙おむつの定額サービス業者の中からの比較検討を経て、最も優位性があるとの判断のもと、導入に至っている。具体的には、園に通う全家庭で一斉に加入することを必須としておらず、必要な家庭だけが契約できるとしている柔軟性や、家庭が業者と直接契約する形をとるため、契約に際して市側に一切の費用負担が無い点などが評価されたものである。
     使用できるおむつの銘柄は「マミーポコ」と「ムーニー(Sサイズ)」に限られるが、任意制であることから、他の銘柄を使用したい家庭については無理に加入する必要はない。また、園で費用を徴収することがないことから、この点で新たに園の業務が増えることもない。
     制度導入にあたっては、私立園・公立園それぞれの園長会で、丁寧に意見聴取を行っている。その中で、多くのポジティブな意見が寄せられた一方、いくつかの懸念点についても指摘がなされた。例えば、園児全員が加入しない場合、おむつ置き場の関係で、保育士の業務の増加につながる可能性である。この点については、あえて制度利用家庭と非利用家庭の児童のおむつ置き場を分けることなく、従来通りのおむつ置き場をそのまま利用することにより、保育士の負担が増えないよう工夫がなされている。
     家庭が負担する費用については、月額2,500円からで、口座振替またはクレジットカード払いとなっており、通販サービスや近隣のドラッグストアなどの価格と比較しても遜色ない価格感となっている。なお、導入当初の2カ月間は、業者側の負担により無料で制度を利用することができたが、費用負担が発生した後も、それほど多くの解約は発生していないとのことである。
     本制度導入のメリットとして、保護者にとっては、おむつへの記名の手間がなくなること、保育士にとっては、おむつの枚数を管理する手間が減ることなどが挙げられる。また、使い放題であるため、おむつの長時間の使用による「かぶれ」の軽減にもつながるものである。
     なお「手ぶら登園」においては、オプションサービスとして、食事用の紙エプロン・手口ふき、お昼寝用コットカバーについても必要に応じ提供がなされているところであるが、清瀬市の公立保育園では、SDGsの観点から、現時点で導入を行っていない。

所感と大府市への反映

 福祉部子育て支援課長からは、今後の「完全」手ぶら登園の可能性についても言及がなされるなど、更なる挑戦についても意欲が示された。「完全」手ぶら登園については、千葉県のキートスチャイルドケア保育園が家庭への負担を求めず実現しているところだが、市としても工夫を凝らし、公費負担とは別の形での財源確保を模索したいとのことであった。こうした子育てに係る費用負担の軽減への意欲的な姿勢は、市長自らが前例主義にとらわれず「事例がなければつくれば良い」との姿勢でスピード感のある市政運営に取り組んでいることが背景にある。
 清瀬市では「清瀬市子育て・キラリ・クーポン券・商品券」を発行している。これは、市内の様々な子育てサービスに利用できる6,000円のクーポン券のほか、市内商店等で商品購入に利用できる4,000円分の商品券を、市内在住の未就学児童のいる家庭に対し、所得制限なしで支給するもので、これに給食費や「手ぶら登園」の利用料を償還払いにより充てることができる。こうした取組も、子育て世帯から子育てサービスを利用する機会がないとの意見を受けて利用可能としているもので、柔軟な制度設計からは、行政の論理ではなく市民目線により、制度をより効果的なものにしようとする柔軟な姿勢が見て取れる。
 大府市においても、ひとり親世帯を始めとする低所得の子育て世帯を応援する目的で「大府市子育て世帯生活応援特別給付金」として対象児童1人につき5万円を支給するなど、子育て世帯への支援にスピード感を持って取組が進められてきたところであるが、家庭や保育士など当事者からの具体的な意見聴取を通じて課題を発掘し、課題解決に必要な施策については前例に捉われず実現に向けた取組を更に活発に進められることを期待するものである。

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