無所属クラブ会派行政調査報告 令和5年1月25日

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ページ番号1026105  更新日 2023年2月13日

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 令和5年1月25日、三重県桑名市を視察しました。

官民連携の取組について【三重県桑名市】

1.調査結果の概要

※桑名市の説明では「官民連携」でなく「公民連携」で統一されているため、1の調査結果の概要については公民連携で記述する。

(1)公民連携の取組 「コラボ・ラボ桑名」ができるまで

三重県桑名市

 少子高齢化による扶助費の増大、現役世代の減少といった社会構造の変化とともに、公共サービスのニーズが生まれ、一方で公共施設やインフラの老朽化といった課題が顕在化してきた。更には、デジタル化や災害リスクも加わる中、持続的に的確に対応し、最適な手法を選択する必要に迫られている。
 桑名市では、平成16年に日本初のPFI手法による図書館複合施設「くわなメディアライブ」を整備している。その後しばらく公民連携については大きな動きがなかったが、経常収支比率99.7%に至ったことから、平成27年に公民連携を所管する部署を創設し、研究のため、当時の最先端であった東洋大学に職員を派遣した。まずは広告掲載募集やネーミングライツといったスモールスタートを積み重ねるうち、「行政が募集し、民間が対応」はそもそも課題と対応手法が行政起点であるため、より効率的な提案を得るには、民間の自由さやノウハウを生かすことができる「対話」と「企画段階からの参画」「いつでも提案、話し合いができる」窓口が必要、と認識した。

(2)公民連携の取組 平成28年「公民連携ワンストップ窓口『コラボ・ラボ桑名』」開設から現在

 「コラボ・ラボ桑名」は、民間事業者と行政をつなぐパイプ役であり、民間事業者と各部課との調整役を担う。
 「市の社会的課題、地域課題の解消を目指し、民間事業者と行政との対話により連携を進め、お互いの知恵とノウハウを結集して新たな解決手法、新たな価値を創出するワンストップ窓口(説明資料引用)」である。
 公民連携の理念を「市民への利益」「まちづくりに永続的に参画するまちづくりパートナー」「財政負担の軽減」の3要素で持続可能なまちづくりを行うものとしている。

〈手法1〉テーマ型提案
 成果事例:桑名駅西土地区画整理事業、中断移転住宅整備事業
 
区画整理で仮換地が整備されるまで、移転対象者が一時的に仮住まいするための集合住宅を整備した。1次審査で提案審査を行い、最優秀な提案にはインセンティブを付して、採用した提案をもとに2次審査で総合評価入札を行った。工期短縮、事業費削減、入居者の早期移転とニーズに応じた対応など、対象市民にもメリットがあった。

〈手法2〉サウンディング型市場調査
 ・成果事例:情報交流施設再生、「又木茶屋」を民間運営
 
赤字から休館になっていた交流施設を、福祉事業者による飲食事業で運営再開。維持管理費が不要になり、地域活性化と障がい者雇用を果たした。
 ・同 成果事例:市役所駐車場の民間運営
 
維持管理費が、年間250万円の赤字から120万円の黒字に転換した。

〈手法3〉フリー型提案
 成果事例:市民会館駐車場運営管理(賃借料収入)、スマホなんでも相談室(スマホ普及とデジタル行政の推進)事業

 桑名市が行っている全ての事業を対象とし、市民サービス向上、歳出削減、歳入確保につながることを常時募集している。
 令和元年11月からは「新フリー提案制度」として、民間事業者のアイディア、ノウハウを保護し、実施段階での公募を行わず協定で行うことにより、提案側にインセンティブをつける。

〈大規模施設の新設整備〉
・令和3年 健康増進施設「神馬の湯」

 塩漬けになっていた市有地と源泉を観光名所に整備し、地域活性化と市民も利用できる温泉施設にした。民設民営で土地貸付収入に。
・令和4年 多世代共生型施設「桑名福祉ヴィレッジ」 
 
市は用地確保、土地を無償貸付し、社協と民間企業で設計、建設整備、施設運営を行っている。母子生活支援施設、養護老人ホーム、児童発達支援センター、生活介護事業所、障がい者サービス事業所物販、公園、交流スペースが集約されている。
 なお、これまで運用していた桑名市福祉センターが福祉ヴィレッジに集約されることにより、旧福祉センターと周辺施設の活用について、令和4年度サウンディング型市場調査を行っている。

(3)指定管理者制度の見直し

 平成18年度から順次導入した指定管理者制度を10年以上運用してきたが、人口動態、財政、施設の老朽化等の経営資源の課題、公民連携による運用手法の多様化といった社会情勢の変化を来たしている。市民サービスの在り方(ソフト)、公共施設の在り方(ハード)の両面から抜本的な見直しを行うことにした。
 平成30年から担当課ヒアリングや一旦直営とするための手続に着手し、平成31年度から全ての施設を直営として、フラットな視点からマネジメントする総点検に取り組んだ。令和2年度に「新たな施設運営の見直しに向けた重点・基本方針」を策定し、令和4年度(視察時点)現在、42施設中9施設が新たな方針が決定している。

2.所感、本市への反映

 今回、官民連携をテーマとして視察を行ったのは、本市の官民連携の現状に対して課題意識を持っていること、本市が民間にとって魅力的な条件がそろっていると見込んでいるため、更なる官民連携の可能性に期待していること、効率的かつニーズに即した市民サービスに資する方策であるためである。
 桑名市は、名古屋近郊で近い都市特性を持っていると考えられ、本市も官民連携の第一弾として、図書館複合施設をPFIで整備しており、指定管理者制度の導入など、初期は桑名市と本市の官民連携のスピードはほぼ近かったと考えられる。一方で桑名市は、平成の大合併を経験し、公共施設の維持管理再編に迫られていたり、住民福祉と地域活性化の拠点として期待されていた多度町の温泉施設計画が保留になったままであったり、経常収支比率が100%に近づき政策経費に苦慮するなど、より強力に課題解決に取り組む必要に迫られていたことなどが、官民連携を大きく進める後押しとなったと考えられる。
 本市においては、公共施設再編再整備に関しては、長寿命化に取り組んでおり、今すぐに建て替えが迫られるものはないが、旧消防署共長出張所や公立保育園の跡地など暫定的な活用に留まるほか、市民球場整備、スポーツ施設へのニーズに対してメディアス体育館の経年数を踏まえた周辺用地との一体活用、中心市街地活性化など、民間にも市にも資源を活用してWin-Winの中に経営負荷軽減と市民サービスの向上を両立する可能性のある財産を多く有している。また、人口集中エリアであり、地価が高い本市であればこそ、集客と公有地活用の面で民間にとって魅力があるのではないか。「官民連携に意欲的なまち」「ビジネスパートナーにしたいまち」として、民間に選ばれ、多く知恵を集めることができるよう、本市もアピールしていく必要がある。その有効な手法として「ワンストップ窓口=いつでも、どこの課に提案していいかわからなくても、民間との温度差や方法の違いの通訳がいる場」の早期開設が望まれる。更には、本市もネーミングライツや連携協定などのスモールスタートはすでに取り組んでおり、サウンディング型市場調査も行ってきたため、窓口開設により更なる官民連携の経験を積むことは、将来への種まきでもある。現状の、所管課と民間との直接交渉型は、俗人的な経験値になりやすく、ワンストップ窓口がコーディネートを担うことは、官民連携のスキルを組織のスキルとしていくことにもなる。また、桑名市の取組においては、官民連携に意欲的なまちとして、コーディネート窓口があることが奏功しているだけでなく、折々に正当なインセンティブを設けていることにも注目しておきたい。
 指定管理者制度については、「公募により競争原理を働かせて、より効率的でより良い市民サービスを」という大前提に縛られ、公募しても継続になる1団体からしか応募がない、ということが繰り返されている。10数年が経過し、契約期間で担い手が変わることに対する利用者の不利益が生じかねないこと、変わるリスクがあるから受託団体が長期的に取り組めないことによるサービス成長の損失なども、考えるところである。さらには、長期間継続してきたことで受託団体が作り出してきたノウハウも評価すべきであり、一定の条件やボーダーを設けて、その目標に足りる管理運営を求めることで、公募を行わないというインセンティブがあっても良いのではないか。施設を利用する市民の利益に叶うことが第一である。以上述べた、本市における指定管理者制度の運用の現状において、桑名市が全ての指定管理施設の見直しに着手していることは、視察目的である本市に対する課題意識に対して、大いに参考になるものであった。
 民間側にとって、公共とのビジネスはコンプライアンス問題や倒産の心配がなく、社会貢献として企業評価にもつながること、縮小社会での継続性、また当然のこととして、事業や実績を増やせることなど、今注目を集めている。行政は、不採算と思って税金丸抱えでやってきたことが、実はビジネスとして成り立つ要素があると気づきにくく、前例踏襲してしまいがちなところがある。そういうものは、民間をパートナーとしてお任せすることで、税金の支出を抑え、行政でなさねばならない福祉に注力することができる。「サスティナブル健康都市おおぶ」の実現のために、官民連携が大いに資することが再認識できた視察であった。

再整備された桑名駅から見る進行中の駅西再開発

再整備された桑名駅から見る進行中の駅西再開発

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