無所属クラブ会派行政調査報告 令和5年1月26日

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ページ番号1026106  更新日 2023年2月13日

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 令和5年1月26日、長野県木曽町を視察しました。

気候非常事態宣言と温暖化対策について【長野県木曽町】

1.調査結果の概要

(1)気候非常事態宣言に関する経緯とその位置付けについて

長野県木曽町

 白馬村や長野県がいち早く気候非常事態を宣言してきた中で、木曽町においても令和2年12月11日、町議会での決議(令和2年3月16日)を受けた気候非常事態宣言が、議会と行政共同で行われるに至った。気候変動の深刻化を踏まえ、地球温暖化に対する意識付けと積極的な行動を通じた循環型社会の推進を図ることで、将来にわたり安定した自然環境の下で、人が集えるまちづくりを目指すとした。「遠い世界のできごと」ではなく「じぶんごと」として捉えられるよう、広報紙やウェブサイト、学習機会の提供等の啓発活動や、公共施設を中心とした自然エネルギー設備の導入促進を図っている。
 具体的な取組は、宣言に盛り込まれた各項目に基づいて実施されており、ごみ減量の課題に対しては、「30・10運動」の啓発やフードドライブ活動による食品ロス削減、公共施設でのエネルギー利用については、温室効果ガス排出量を平成25年度から令和7年度で12%の削減目標、町内全体においても自然エネルギーを有効活用した設備の普及促進、町民への啓発については民間企業の協力による環境学習のほか、自然観察プログラムや環境保全活動など、限りある資源を有効活用した持続可能な社会の実現に向けた、様々な施策を実施している。森林資源の適切な管理、保全による温室効果ガスの排出抑制については、従前より取り組んできた森林エネルギー活用事業を引き続き積極的に推進するとし、ペレット等の木質燃料の需要増に備えた供給拠点施設の拡張も検討されているほか、Jクレジット制度による温室効果ガス吸収権の販売も行っている。

(2)気候非常事態宣言に基づく温暖化対策の取組の現状と今後の見通しについて

 今後の見通しとしては、地域脱炭素実現に向けた再生可能エネルギーの計画づくり(環境省の補助金を活用)を通じ、2050年を見据えた「地域再エネ導入目標」の策定を目指すとしている。
 町役場本庁舎(令和2年竣工)の木質バイオマスボイラーなど、公共施設を中心とした再生可能エネルギー設備の導入推進に加え、民間にも波及を促すための補助の拡大、個人や中小企業の取組への支援等も進めていくとしている。バス、タクシーにおけるEV等の環境性能自動車への更新も支援したいとのことであった。

バイオマスチップが貯蔵されている保管庫
町役場本庁舎の木質バイオマスボイラーの燃料であるバイオマスチップが貯蔵されている保管庫

(3)Jクレジット制度を活用した取組に至った経緯と現状について

 Jクレジット制度の認証取得に至った背景としては、やはり森林整備における財源確保の課題が大きい。町有林のみならず、森林組合等が実施する森林整備への補助金拠出も、財政的に大きな負担となっており、長野県が小海県有林で実施したクレジットの販売実績を見て、取得に動き出した経緯がある。
 ヒノキ町有林21.39haにおける平成26〜27年度の温室効果ガス吸収量として、306t-CO2の認証を受け、平成28年2月22日の購入第1号を皮切りに、これまでに累計で261t-CO2(令和5年1月5日時点)分のクレジットが22の相手先に販売されており、販売価格は16,500円/t-CO2(税込み)である。令和4年度には70t-CO2もの大型購入があり、関心とニーズの高まりに手応えを感じている一方、現在は国での認証作業が順番待ちとなっていることから、クレジットの在庫をなかなか増やせない状況であるとの説明もあった。

※Jクレジット制度=省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用によるCO2等の排出削減量や、適切な森林管理によるCO2等の吸収量を「クレジット」として国が認証する制度(出典:「J-クレジット制度」ホームページ)

2.所感、本市への反映

 本市は、自動車関連産業を中心に今や1.2兆円規模の製造品出荷額を誇る工業都市であるが、その繁栄の大きさそのものが、カーボンニュートラルにおいては、自らを映す鏡のように巨大な壁として我々の前に立ちはだかることとなった。そして、市内にわずか100haほどしか森林が存在せず、温室効果ガスの吸収源をほとんど持たない現実もまた、ゼロカーボンの実現に向けた取組をまち全体で推進していくに当たっての大きなディスアドバンテージと言える。こうした地理的条件のもとで発展を遂げてきた本市の産業にとって、自らの努力だけではどうしても削減しきれない温室効果ガスについて、吸収権購入によって相殺するカーボンオフセットの仕組みを活用することは、まち全体のカーボンニュートラル実現の観点からも、いずれ避けては通れない選択肢になるものと予見している。
 一方、温室効果ガスの吸収源となる広大な森林を涵養している中山間自治体では、適切な林野整備の持続可能性において財政面での大きな課題を抱え続けており、国の認証を受けたJクレジットの販売は、その財源確保の有効な手段として期待されている方策の一つである。長野県では現在、Jクレジット認証のマニュアルづくりを進めているとのことであり、今後、同様の取組が更に県内の各自治体に広がっていく可能性は高い。本市が都市間交流を行っている王滝村でも同様の取組が始まった際には、市内の企業・団体等におけるゼロカーボンの推進において、その活用が積極的に図られるよう、市が旗振り役となることを期待したい。
 世界規模となった気象異常と地球温暖化との因果関係に、もはや議論の余地はなく、その余波は度重なる豪雨災害となって、木曽町が所在する木曽谷にも繰り返し襲いかかっている。過去に伊勢湾台風や東海豪雨を経験している本市にとっても、その痛みは決して想像に難くないものであり、温室効果ガスの吸収源となる森林環境の持続可能性の確保は、もはや自治体の壁を超えた共通の利益と認識するとともに、本市の発展もまた、そのための数多の労苦によって支えられてきたという意識を、今後は広く市民に共有していくべき時期に来ているのではないかと感じた。

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