親和クラブ会派行政調査報告 2026(令和8)年1月19日から21日まで
2026(令和8)年1月19日から21日にかけて、石川県金沢市、小松市及び福井県福井市を視察しました。
DXアクションプランについて【石川県金沢市】
取組の背景・目的

- 金沢市では、国が推進するデジタル田園都市国家構想を始めとした社会全体のデジタル化の進展を背景に、行政サービスの利便性向上と行政運営の効率化を図る必要性が高まってきた。これを受け、2019(令和元)年度に「ICT活用推進計画」を策定し、RPAやAI-OCR、電子申請などのデジタル技術の導入を進めてきた。
- その後、デジタル技術の進展や社会環境の変化を踏まえ、2021(令和3)年度には「金沢市デジタル戦略」を策定し、デジタル施策を全庁的に推進する体制を構築。さらに、2023(令和5)年度からは「金沢市DXアクションプラン(2023(令和5)~2025(令和7)年度)」を策定し、単なる業務のデジタル化にとどまらず、デジタル技術を活用した行政サービスの変革や、市民生活の質の向上を目指すDXの取組へと発展させている。
- DXアクションプランでは、行政分野に加え、産業・地域・文化・教育といった分野においてもデジタル技術の活用を進めることで、金沢市がこれまで培ってきた地域資源や強みを生かしたまちづくりを推進することを目的としている。また、こうした取組を持続的に進めるため、DXを現場から推進できる職員の育成を重要な柱の一つとして位置付けている。
取組の内容
1.DXの取組
- 金沢市では、市長直轄の外部有識者会議である「金沢市DX会議」と、全庁横断の「DX推進本部」を設置し、専門的知見を取り入れながら迅速な意思決定と全庁的なDX推進を図っている。推進体制についても段階的な見直しを行い、2025(令和7)年4月には「デジタル政策課」を設置し、市民向けデジタル施策の推進体制を強化している。
- 行政サービス分野では、「行かなくていい市役所」、「書かない・待たない市役所」をコンセプトに、電子申請サービス、申請書の事前作成、書かない窓口、窓口キャッシュレス決済などを段階的に導入。条例整備や決済手段の多様化を進めることで、電子申請の利用件数は着実に増加し、特定の手続では全体の約4割がオンライン化されるなど、市民の利便性向上と事務効率化の両立が図られている。
- 庁内業務においては、フリーアドレスの導入、ペーパーレス会議の推進、電子決裁の全面化を実施。特に電子決裁については、市長決裁を含め、原則全てを電子化し、文書管理の効率化と意思決定の迅速化を実現している。これらの取組により、コピー機利用枚数の削減や電力使用量の低減など、具体的なコスト削減効果も確認されている。
- さらに、産業・観光・地域・文化・教育・行政といった各分野において、MaaS(※)や観光混雑予測、地域課題解決プラットフォーム、デジタルミュージアム、教育データ活用、防災分野でのAI・ドローン活用など、金沢市の特性を生かした分野横断的なDX施策を展開している。
- 具体期な取組としては、次のとおりである。
(1)デジタル交通サービス「のりまっし金沢」
公共交通のデジタル乗車券販売や時刻検索等を一体的に提供するMaaSサービスとして、市内移動の利便性向上を図っている。
(2)専用SNSサービス「マッチ箱」
地域課題をオンライン上で共有し、市民・団体・企業の協働による課題解決を促進するプラットフォームとして運用している。
(3)デジタルミュージアム「金沢ミュージアム+」
市内文化施設の所蔵品をデジタルで横断的に公開し、文化資源の発信と新たな鑑賞体験の提供を行っている。
2.デジタル人材育成
- 金沢市では、DXの推進には人材育成が不可欠であるとの考えのもと、業務をよく知る現場職員が主体となってDXを創出する体制づくりに取り組んでいる。
- 全職員を対象としたデジタル研修を実施し、デジタルスキルの底上げを図るとともに、全職員向けのデジタル研修では、外部教材に頼らず、職員自らが作成したオリジナルテキストを用いて研修を実施し、実務に直結したデジタルスキルの底上げを図っている。
- あわせて、業務改善に意欲のある職員を対象に「デジタル行政推進リーダー育成研修」を実施し、デジタルツールの習得に加え、市民目線で課題を捉えるサービスデザイン思考を重視した研修を行っている。育成された職員は、庁内DXプロジェクトチーム等を通じて、現場発のDX推進に取り組んでいる。
(※)「MaaS」とは、Mobility as a Serviceの略。地域住民や旅行者一人一人のトリップ単位での移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービスのこと。(国土交通省ウェブサイトより引用)
所感・大府市への反映
- 金沢市のDXアクションプランは、幅広い分野でDXを活用し、個別課題の解決に取り組んできた点が特徴である。特に、庁内DXについては早期から着手され、電子決裁やペーパーレス会議等により具体的な効果を上げている点は、高く評価できる。
- DXアクションプランの内容は、文化・伝統資源が豊富で観光都市としての性格を持つ金沢市ならではの取組が多く、観光DXや移動サービス分野では先進的な施策が展開されていた。MaaSを活用した移動サービスや観光混雑予測などは、都市の特性を的確に捉えたDXの好例であると感じた。
- 地域分野においては、町内活動のデジタル化やシビックテックの推進など、地域課題の解決にDXを積極的に活用している点が印象的であった。中でも、専用SNSサービス「マッチ箱」による課題募集や意見交換、課題解決チームのマッチングという手法は非常に興味深い取組である一方、利用者の拡大が課題となっている点も率直に共有された。加えて、デジタルミュージアムや公共交通分野では一定の成果が見られる一方で、「カナカ」のように利用者数が伸び悩む施策もあり、DX施策は必ずしも短期的に成果が現れるものばかりではないことも確認できた。
- 効果が見えにくい施策を含めて積極的に挑戦を続けている点は重要であり、DXを中長期的な視点で捉え、トライアンドエラーを前提として推進していく姿勢の大切さを改めて感じた。
- デジタル人材育成については、DXに必要な人材を情報部門に集約するのではなく、業務をよく知る現場職員が主体となってDXを創出するという考え方が極めて重要であると感じた。現場を理解する職員がデジタルの知識も併せ持つことで、実効性の高いDXが生まれることが期待できる。一方で、デジタルに不慣れな職員への配慮という課題はあるものの、若い世代を中心に一定のデジタル素養を持つ職員が増えている現状を踏まえれば、今後、更に推進可能な取組であると感じた。
- 職員自らがオリジナルテキストを作成し、約100時間を掛けて体系的に学ぶ人材育成は、一見すると即効性に欠けるようにも見えるが、結果として業務の大幅な効率化や内製化につながっており、受講者の声からも前向きな評価が多く寄せられていた。また、研修を通じて職員同士の横のつながりが生まれ、全庁的な課題解決につながっている点も大きな成果である。
- 外部委託では費用対効果が見合わず、仕様変更のたびにコストが発生しがちな分野において、職員自らがツールを作成できる体制を整えることは、DX推進において不可欠であると感じた。
- 本市においても、今後のDX推進に当たっては、単にツールを導入するだけでなく、デジタル人材を育成し、その能力を発揮できる環境づくりを一層進めていく必要がある。また、職員が研修を受けたいと感じられる内容や、挑戦を後押しする組織風土を醸成し、さらにはDX人材になることで何かしらのメリットを感じてもらう環境を構築することが、持続的なDX推進につながるものと考える。
ドローンを活用した買い物支援について【石川県小松市】
取組の背景

- 2023(令和5)年8月28日にドローンを活用したスマート物流のサービスが開始された。対象は松東地区であり、小松市の南東に位置する。この地区は、小松市の中でも比較的人口の少ないエリアであり、現地ではいわゆる「買い物難民」の問題が将来的に起こるであろう地区として認識されている。また、地元をまわる民間の配送業者の間でも、民家が少なく、配達の効率については課題を抱えている現状があった。俗にいうラストワンマイル問題である。
- こうした問題に対する支援策として、ドローンを活用し、対象地区の買い物や物流を支援しようと模索を続けている。
取組の内容
- 本取組の際にドローンデポ(離陸地点)が設置されたのは、「ほのぼの松東」という地点である。この施設は、地元ではスイーツ店として認識されており、また、小松市役所から見て松東地区の入口とも言える場所であり、この一角にドローンデポを設置することで、さらに南東(松東地区の奥地)まで配送範囲をカバーする意味合いがあった。
- この取組は、デジタル田園都市国家構想交付金を活用して行われている。
- ドローンの発信地点と着陸地点を確保することに課題がある。特に、受け渡しの際にも人による着陸地点の安全確認が必要で、担当職員が現地まで行くこともあるとのことである。買い物をしてドローンに搭載するまではいいが、荷物の受け渡しにおいても人が必要なため、このやり取りの自動化が課題になる。
- 現状、ドローンの性能で運べる荷物は5kgまでで、配達範囲は5km以内である。大型のドローンを使えば対応可能な荷物量や配達範囲は広げられるが、予算の都合上難しい。現段階でも、松東地区全てはカバーできていない。
- ドローンのリモート操縦はまだ実現していないので、操縦士の養成が課題である。
- 小松市では小学校区ごとに公民館があるので、公民館をドローン拠点として共用の受取ボックスをつくり、地域住民に受け取りにきてもらう案もあるとのこと。
- 現在は、市内でドローンを飛ばす実証実験のような段階ではある。ただし、将来的に必ず買い物難民が出てくることを考え、試験施行できることから取り組み、さらに今から様々な案を模索していこうという状態である。
所感・大府市への反映
- 試行段階ということで、本市への反映という点では難しい面もあるが、本市でも買い物難民を生じさせないための一案と考えれば、一考の余地があるとも考える。市街地はあまり買い物難民という印象がないが、長草地区、吉田地区などを筆頭に、今後、買い物支援の重要性は増していく。それに対し、検討の俎上には載るアイデアだと考える。
- 現段階で課題となるのは、(1)受取の無人化、(2)ドローンの発着場整備、(3)操縦士の育成などである。また、これらとは別に、現状の物流についての課題が本市でどこまで表面化すると考えられるかにも注目しなければならない。小松市においても、陸運とドローン輸送の組合せで現状としては問題なく物流を行うことができており、今後、物流がどのように変化していくかを見極めながらの試行になっていくとの見解を示されていた。本市においては、既に買い物支援を進めていることや、小松市のような広い自治体における物流の問題が比較的大きくないこともあり、今すぐ決断を迫られるものではない。
- それでも、現時点で試験実施をしている小松市は、非常に先駆的である。本市にとっても、ドローンを活用する方法に限らず、買い物難民を生む可能性があることを危機感として認識し、その対応策を常に調査研究すべきである。
小中学校における学力・体力づくりの取組について【福井県福井市】
取組の背景

- 福井市では、学校教育方針として、「学びをつなぐ・未来につなげる~『つながる』を大切にした学校づくり~」を掲げ、「つながるプロジェクト」に基づく取組を進めている。
- このプロジェクトでは、子どもの学びに関する重点項目を明確にし、取組の焦点化を図るとともに、学校評価におけるPDCAサイクルの確立を目指している。また、「つながるプロジェクト」における教職員の協働として、実践を語ることができる教師の育成や、目標管理表を活用した協働体制の構築を進めている。
- 重点項目としては、
(1)わかる授業づくり
(2)居場所づくり・絆づくり
(3)家庭・地域や中学校区との連携
(4)心づくり・体づくり
(5)キャリア教育の充実
(6)ICTの活用
の6項目を掲げており、各学校は毎年、この中から1から3項目を選択し、効果が期待できる方法を提案・実践している。
取組の内容
- 福井市では、家庭・地域や中学校区との連携を重視し、同一中学校区内の園・小・中学校が一体となって、子どもの学びの連続性、目標・内容の系統性、指導の継続性を踏まえた意図的・計画的な一貫した取組を行っている。
- こうした地域と協働した教育を進めることにより、子どもが地域の一員としての自覚を持ち、将来にわたって地域づくりに貢献できる人材の育成を目指している。
- 具体的な事業としては、地域の特色を生かした体験活動、教育ウィークの開催、わくわく交流デーの実施などが挙げられる。これらの事業については、用途を幅広く認めた上で予算措置がなされ、積極的な支援が行われている。
- また、キャリア教育の充実に向けて、商工会議所青年部や青年会議所などの経済団体と連携し、各団体によるキャリア教育の実践を学校現場へ提供している。
(1)学力に対する取組について
福井市は、全国学力・学習状況調査において全国平均を上回る結果を継続しており、その要因分析のために調査研究委員会を設置し、市全体としての結果分析を行っている。その成果として、「全国学力・学習状況調査結果分析リーフレット」を作成し、課題に対する具体的な改善策を提示している。
各小中学校においても、校内研究会等を通じて学校ごとの課題分析を行い、改善策の検討・実践につなげている。さらに、教職員向けの研修制度も充実しており、目的別研修など、課題に応じた研修が実施されている。
特徴的な取組として、中学校ではいわゆる「縦持ち」を採用しており、学年ごとに担当を固定するのではなく、1年生から3年生まで全学年の授業を受け持つ体制をとっている。これにより、3年間を見据えた指導が可能となっている。
また、同一教科内での学年全体の状況把握を目的に、定期的な教科会を開催し、相互に補完し合う体制を整えている。
(2)体力に対する取組について
福井市は、全国体力・運動能力、運動習慣等調査においても、全国トップクラスの成果を上げている。
年度当初には、業間運動を含めた「体力つくり推進計画書」を作成し、年度途中には体力テスト結果の分析と対策を行い、年度末には「体力つくり推進報告書」として総括している。
業間運動については、生徒の自主性を尊重するため、スタンプカードを活用するなどの工夫を行い、外遊びや身体活動を積極的に促進している点が特徴である。
所感・大府市への反映
- 福井市は、学力・体力の両面において、全国平均と比較して高い水準を維持している。今回の視察を通して特に強く感じたのは、各学校内における教職員同士の協働体制が確立されていることであった。
- 日常的に話し合いや相談が行われる体制が当たり前のものとして根付いており、「業務負担が増えるのではないか」との問いに対しても、課題を丁寧に分析し、検討・実践を重ねることで、結果として負担の軽減につながっているとの回答が印象的であった。
- だからこそ、本市においても、教職員同士の連携はもとより、地域との連携を視野に入れた協働体制をしっかりと整え、子どもたちの学びと成長を支える取組を一層推進していくことが重要であると強く感じた。
- また、体力づくりの面では、業間運動の重要性を改めて認識した。本市においても、まずは「外で遊んでおいでよ」といった声掛けから始め、子どもたちが日常的に身体を動かすことの大切さを伝えていくことが必要である。
- 成長期における運動習慣の重要性を踏まえ、業間運動の時間を確実に確保する取組を進めていくべきであると感じた。
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