親和クラブ会派行政調査報告 2026(令和8)年1月21日から23日まで
2026(令和8)年1月21日から23日にかけて、兵庫県小野市、大阪府泉南市、泉佐野市及び枚方市を視察しました。
「夢と希望の教育」の取組について【兵庫県小野市】
取組の背景・目的

小野市では、「やりたいこと」、「できること」、「もとめられること」が重なる部分が「夢」であり、「願望(ねがい・思い)」と「期待(進む道・選択肢)」が重なる部分を「希望」と捉えている。また、脳科学に基づく教育を推進しようとしており、「前頭前野」を鍛えることで「生きる力」を育み、心の教育を推進している。
その契機となったのは、2004(平成16)年頃に、全国的に子どもの学力低下が問題となったことである。学力向上のため、ある学校で漢字や計算の基礎学力テストが始まり、それが「おの検定」へとつながっていった。また、2005(平成17)年10月に、東北大学教授の川島隆太氏が小野市教育行政顧問に就任したことで、脳科学に基づく教育が始まった。
取組の内容
重点施策1は、2004(平成16)年度から実施している「おの検定」である。小中学校統一の独自検定で、基礎学力を定着させ、豊かな心を育む学習システムとして、漢字・計算・英語を実施している。体力面では、縄跳び運動で基礎体力向上と継続した運動習慣の確立を目指している。
重点施策2は、「小中一貫教育」と「16か年教育」である。市が関わる教育は、本来、中学卒業までの15年だが、妊娠期を含めてマイナス1歳から15歳までの16年間を対象としている。
重点施策3は、自主的な公開授業の実施によって教員の授業力向上を行う「小野市型学力向上」と、学校と教育委員会の新しい関係の構築や空調設備完備、タブレット・Wi-Fi完備等、「教育環境の整備」である。
これらの施策をもとに、学びのつながりを重視し、「自立」を目指す小中一貫教育を推進している。
所感・大府市への反映
- 小野市の教育は、「何を大切にする教育なのか」という思想が最初にあり、その思想を20年掛けて制度・運用に落とし込み、定着させてきた点に最大の特徴があると感じた。
- 学力向上か心の教育か、ICTかアナログかといった二項対立ではなく、脳科学という客観的な理論を軸に、「基礎学力こそが心を育てる」という一貫したストーリーを描いている点は、極めて説得力がある。
- 「おの検定」は、点数競争や序列化に陥りがちな学力施策とは一線を画し、再挑戦できる仕組みを制度として組み込むことで、子どもに成功体験と自己肯定感を積み上げている。通知表や進路に直結させない判断も、「検定は評価のためではなく、挑戦のための装置である」という思想の表れであり、制度設計として非常によく考えられている。
- 教育を学校内で完結させず、胎児期から家庭環境・生活習慣まで含めた「16か年教育」として捉え、健康部局と連携している点は、教育行政を超えた総合政策として注目すべきである。スマートフォンとの付き合い方や睡眠、朝食といったテーマに正面から向き合い、データで成果を示している点も評価できる。
- 大府市への反映を考えると、直ちに同様の「検定制度」を導入するかどうかよりも、まずは、「教育の目的をどこに置くのか」、「学力施策と心の育成をどう結びつけるのか」、「ICT活用を手段としてどう位置付け直すのか」という思想整理が不可欠であると感じた。
- 大府市が進める教育の質の向上という取組も、小野市のように「脳の発達」、「生活習慣」、「家庭との連携」という視点を加えることで、より立体的な政策へと進化させる余地がある。また、検定という形式に限らず、再挑戦できる仕組み、努力が見える化される仕掛けは、大府市の教育施策にも十分応用可能である。
- 小野市では、おの検定で育った者が親世代となることで、おの検定に対する親の理解度も高い。このことは「教育は短期間で成果を求めるものではなく、世代を超えて実を結ぶ政策である」ということを、20年という時間軸で示している。大府市においても、目先の制度導入や見直しではなく、10年後、20年後の子どもたちの姿を見据えた「教育政策の再構築」という視点からの検討も必要ではないかと感じた。
子どもの権利に関する条例について【大阪府泉南市】
取組の背景

2005(平成17)年当時、全国学力・学習状況調査(文部科学省)の自己有用感や幸福感等の回答において、子どもたちの自尊感情が低い現状があった。将来、泉南市に生まれ育つ全ての子どもが「泉南市に生まれてきてよかった」と心から思える「子どもにやさしいまち」を目指す取組として、次世代育成支援対策地域行動計画(前期計画)に「子どもの権利に関する条例」の研究・制定を明記した。「泉南市子どもの権利に関する条例案検討委員会」を設置し、「子どもの権利条約」を基に、2012(平成24)年に大阪府では初となる「泉南市子どもの権利に関する条例」(以下、「条例」)を制定した。
2025(令和7)年、新たに条例の第3章に「子どもの権利の救済」として、子どもを救済するための第三者委員会である「子どもの権利救済委員会(救済委員会)」の設置を明記し、第4章において、「条例の実施と検証」を定め、毎年、市の取組状況を市民に公表している。
取組の内容
条例の策定に当たっては、子どもたちの条例であるため、子どもの意見を反映することを目的に、市内小学校5年生から中学校3年生までの子どもたちに参加を呼び掛け、年4回「泉南・子ども・語ろう会」を開催した。会の開催に当たっては、元関西学院大学准教授であり、兵庫県川西市子どもの人権オンブズパーソンである浜田進士氏をファシリテーターに迎えて、学校以外で子どもたちを集めるということを考慮し、子どもにとって楽しいことや好きそうなことを取り入れることを優先した。その後、毎年、子ども会議を開催して、「子どもの権利」について子どもたちへの周知啓発を行っている。
所感・大府市への反映
- 泉南市では、「せんなん子ども会議」を設置し、子どもが自らの意見を話し合い、市の施策に継続的に反映する仕組みを条例で明確にすることで、子どもを社会の一員として尊重し、意見を聴く仕組みの制度化を行っている。本市でも「おおぶわいわいこどもトーク」など、子どもの声を聴く取組を実施しているが、泉南市のように条例に基づく継続的な参加機会や子ども主体の会議体を制度化することで、より政策への反映と継続的な子ども参加が実施しやすくなる可能性がある。
- 泉南市は2025(令和7)年に、「子どもの権利救済委員会」の設置を条例に明記し、いじめや虐待などの人権侵害について、子ども自身からの相談や救済の申立てを可能にしており、子どもの権利保障を実行する具体的な仕組みである。本市でも子どもの権利に関する啓発や理解促進の取組があるが、救済や相談窓口の仕組みの制度化や条例に位置付けるなど明文化が検討されると、子どもの権利保障の実効性が高まる。
- 泉南市は、条例第19条に基づき「子どもの権利条例委員会」や「市民モニター制度」を設け、市民や子どもの意見を取り入れつつ実施状況を検証し、公表する仕組みを整えている。これにより、実効性を担保し、市民にも透明性を持たせる体制となっている。本市の「こども計画」は包括的な計画として策定されているが、市民や子どもを含む検証や評価の仕組みを制度化することで、計画の進捗や実行性をより客観的に確認できるようになると考える。
- 泉南市の条例では、「子どもの権利の日」(11月20日)を定めて、広報や学校での学習を進めるなど、「権利の意識」の普及を継続的に実施している。本市では、絵本などを通じて「子どもの権利」についての理解促進を進めているが、泉南市のように定められた記念日や広報の仕組みと計画的な教育連携を強化することで、保護者や大人側への啓発も含めた権利の理解の浸透が期待できる。
自治体電力の取組について【大阪府泉佐野市】
取組の背景

一般財団法人泉佐野電力は、電力の自由化を背景に、クリーンエネルギーの地産地消、公共施設の電気料金の削減等を目的として、2015(平成27)年1月に設立され、現在はパワーネクスト株式会社と共同運営を行っている。設立時の出資額は300万円で、出資率は泉佐野市が2/3(拠出金200万円)、PSJL共同企業体(パワーシェアリング株式会社と日本ロジテック協同組合)が1/3(拠出金100万円)である。
群馬県中之条町の「一般財団法人中之条電力」をモデルとした西日本初の自治体PPS(特定規模電気事業者)であり、2016(平成28)年より小売電気事業者となっている。なお、特定規模電気事業者とは、ビルや工場等、契約電気が50kw以上の高圧電力を必要とする需要家を対象として電気事業を行うものである。
一般財団法人の特徴として、「剰余金(利益)や残余財産の分配ができない」、「解散時の残余財産は、国若しくは地方公共団体に寄附」、「純資産が2年連続で、基本財産(300万円以上)を下回る状態となった場合には解散」といったものがある。
取組の内容
泉佐野電力は、2024(令和6)年度において、高圧49、低圧255、計304の公共施設と、高圧12、低圧47、計59の民間施設に電力を供給している。なお、公共施設へは、泉佐野電力だけでなく、関西電力からも電気が供給されているが、2024(令和6)年度における供給電力量の割合は、泉佐野電力が約99%を占めている。
市内にため池を利用した水上太陽光発電所が3カ所あり、昼間の供給電気量は十分多いため、余剰が発生している状況である。原則、その余った電力は、買う値段より売る値段の方が安くなる。余剰電力はJPEX(一般社団法人日本卸電力取引所)に売らないければならないため、余剰電力が多いほど収支が下がっていく。従って、余剰電力を減らすため、新たな需要家を獲得していくことが課題となっている。
また、2024(令和6)年度から始まった容量拠出金制度の影響で、経営は苦しくなっている。
さらに、電線の維持費を発電事業者側に一部負担させる発電側課金制度の影響もあるため、今後は電気料金について考える必要がある。
来年度からは、市が所有する木質バイオマス発電所の運営・管理を行っていく予定である。これは、森林整備事業で発生した間伐材をチップ化し、乾燥させた後、チップから発生するガスを利用して発電する事業で、2026(令和8)年度からは約7万3,000kw/hの発電を予定している。
所感・大府市への反映
- 泉佐野市と、プロポーザルにより公募した民間PPS(特定規模電気事業者)とで一般財団法人泉佐野電力として自治体電力事業を行っている。発電施設(太陽光発電パネル)の設置と電力需給管理を民間PPSが担い、自治体電力会社は、発電された電力の売買に関わる事務を行っている。当初見込んでいた発電施設設置場所が利用できない中で、ため池を活用して水上に発電パネルを設置することにした。農業従事者の高齢化により維持が困難になっていたため池管理者にとっても、泉佐野電力からの借用費をため池の維持管理費に充てることができる。行政、民間PPS、ため池管理者に有益であり、一石三鳥の事業であった。「行政が『支出なし』でやる」という仕組みは参考になる。
- カーボンニュートラルに対する取組として、「調達電力のうち再生可能エネルギーの占める割合=50%」を目標としている。夜間は、太陽光を利用した発電ができないためである。今後、ゼロカーボン100%を目指すには、(1)蓄電池の設置、(2)現在進行中の間伐チップによるバイオマス発電の実施の取組が必要となる。
- 自治体電力の事業について、一つの市だけで行うより広域の市町で実施するほうが効率がよいと考える。さらに、水上パネル発電には広いため池が必要となってくる。本市は、ため池利用だけの発電は適していないが、公共施設の屋上利用としての発電は可能性があるのではないか。ただ、太陽光パネルのリサイクルの仕組みが確立してからのほうが、環境に配慮した取組になると考える。
ひらかたポイント制度の取組について【大阪府枚方市】
取組の背景・目的

ひらかたポイント(ひらポ)事業は、2018(平成30)年度から非接触型ICカードによるポイント事業を開始し、2021(令和3)年度からは、QRコードを用いたスマホアプリとカードで運用している。健康増進に係る取組にポイントを付与するなど、市民の健康づくりに関する取組を後押しする一助として推進してきた。また、貯めたポイントを市内の協力店で使用できることで、経済の循環による地域活性化を図るとともに、ひらかたポイント利用者数の過半数以上を占める高齢者の外出機会創出にも貢献している。
(1)市民の健康増進を目的に、特定健診や後期高齢者医療健康診査、がん検診、介護予防教室などを受けることでポイントがもらえる。
(2)子育て支援を目的に、妊婦支援ポイントとして、妊娠の届出や母子手帳別冊交付申請をした方に2,000ポイントがもらえるほか、離乳食講習会に参加すると100ポイントがもらえるなど、市の様々な講座への受講促進にもつなげている。
(3)市民のまちづくりへの参加意欲の醸成を目的に、スマホアンケートに回答すると10ポイント、自主防災組織活動に参加すると50ポイントがもらえるなど、地域の事業への積極的な参加を促進している。
取組の内容
- 事業開始から2025(令和7)年3月末時点で、利用者登録数は約7万8,000人である。
- 利用実績は、発行ポイント数では現在までの累計で約2億ポイント、使用(交換)ポイント数は約8,000万ポイントである。
- ひらかたポイント協力店は約500店舗ある。
- アプリを用いた健康増進行動の推進に取り組んでいる。アプリの歩数連携機能により、歩数計測アプリと連携し、歩数に応じてポイントが貯まる。5,000歩で1ポイント、8,000歩でさらに1ポイントが貯まる。年々ウォーキング利用者が増加しており、ひらかたポイントをきっかけに歩くことが習慣化してきている。
- 高齢者の継続的な健康増進行動の後押しを目的に、対象事業に参加するとデジタルスタンプが貯まり、スタンプが一定数貯まるとポイントがもらえる「シニアおでかけスタンプwithスマホ」という新機能を2025(令和7)年7月に追加した。貯まったポイントは協力店で使用できるほか、バスポイントやタクシークーポンへの交換が可能であるため、高齢者の外出機会創出に寄与している。
- 現在は、アプリかカードのどちらか都合の良い方で利用できる運用を進めているため、併用によるコストが年々かさんでいる。
- サポート体制を見直したくても、カードとアプリの併用が可能な事業者が少ないことから、競争入札にかけにくく、同一事業者への業務委託に依存してしまっている。
- 祭りやイベントで「ひらポ」のブースを置いて市民向けにPR活動を行っているが、高齢者はまだまだカード利用を希望する人が多く、アプリ一本化への移行が難しい。
所感・大府市への反映
- 人口39万4,000人のうち7万8,000人が「ひらポ」に登録しているが、そのうち5万人ほどが高齢者であり、高齢者のうち1万5,000人から2万人ほどは継続してウォーキングを続けているなど、積極的にポイントを活用しているとのことである。一番の目的が市民の健康増進と子育て支援であるため、参加者の健康増進に寄与する取組としては効果的であると考える。
- ウォーキングでポイントを貯める人、協力店で買物や食事をしてポイントを貯める人は、健康増進や外出促進という効果が見られる。一方で、そのポイントを使う機会があまり見つからないのか、多くのポイントが未使用になっている。もっと身近で使いやすいと感じられるポイントの利用先が見いだせるとよいのではないかと感じた。
- ポイントの使い道として、市のごみ袋が買える、粗大ごみを捨てる際の費用にも充てられるなど、生活に直結した部分に利用できると、よりポイント活用を身近に感じられるのではないだろうか。
- 本市で同様のポイント制度事業を開始する場合、前提として、アプリ一本化で運用すべきと考える。高齢者の利用促進のために、最初は丁寧な説明が必要であるが、コスト面や運営と管理の効率化を図ることを考慮すると、高齢者でも当たり前にアプリを使いこなせる状態を目指すべきだと思う。
- 大府市内にある飲食店等の店舗数で同様のポイント制度を設計するには、健康増進や子育て支援はもちろんのこと、商業の活性化にも寄与する事業になるような工夫を施す必要があると考える。
- ポイント施策は「制度設計」以前に、アプリの基本動作でつまずくと離脱してしまうため、簡単に操作ができて、通信速度が速く、使いやすくなくてはならない。また、不具合が起こった際には、改善状況の周知(改善した点を簡潔に示すこと)も重要である。
- 市民の健康増進や子育て支援、市民の各種イベントへの参加意欲醸成などを目的にした事業としての価値はあると感じるが、その制度の良さを生かすには、初期設定の簡素化、利用可能店舗の見える化、トラブル時の救済と代替手続の整備も併せて配慮が必要である。費用対効果をどのように設定するかの判断が難しいと感じた。
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