親和クラブ会派行政調査報告 2026(令和8)年7月8日から10日まで

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ページ番号1040048  更新日 2026年8月4日

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2026(令和8)年7月8日から10日にかけて、公明党と合同で、岩手県遠野市及び紫波町並びに宮城県東松島市を視察しました。

遠野市歴史文化基本構想、文化資源の経済化及び文化継承について 【岩手県遠野市】

取組の背景・目的

岩手県遠野市

 遠野市は、柳田國男の「遠野物語」により、「民話のふるさと」として全国的に知られており、2007(平成19)年度という全国的にも早い段階で、市独自の文化財保護制度である「遠野遺産認定制度」の運用を開始し、文化的なまちづくりに取り組んできた。
 遠野市はこれまで、文化財行政全体を貫く総合的なマスタープランを持たなかった。そこで、指定・未指定を問わず市内の文化的特徴を整理し、これを周辺環境も含めた文化的資産として総合的に保存・活用していくため、2019(平成31)年3月に「遠野市歴史文化基本構想」を策定した。
 構想では、「『遠野物語』を紡ぎ続ける遠野の未来創造-歴史文化の継承からふるさと遠野の発展-」を歴史文化の大テーマに掲げ、ストーリー性を持って文化財を捉え直している点が特徴的である。

取組の内容・現状

(1)遠野遺産認定制度
 遠野遺産認定制度は、「遠野を特徴付ける遠野らしいもの」であって、市民が次世代に残していきたいと考えるものを対象に、「遠野らしさ」、「保全活動」、「活用」の三つを認定基準として、市民協働により保存・活用する遠野市独自の制度である。指定文化財のように法令上の保護措置が及ばない「未指定文化財」を対象に含める点に特色があり、市が主導するのではなく、地域住民が自ら発掘・推薦し、認定後の保全活動も担うという「内からの視点(主観的価値)」を重視した制度設計になっている。
 2025(令和7)年までに18回の認定を経て、計175件が認定されている。

(2)現在実施している主な事業
 文化財調査保護費、埋蔵文化財発掘調査費、まちなか・ドキ・土器館管理費、遠野遺産認定事業費、重要文化財千葉家住宅整備事業費、文化的景観保存事業費、郷土芸能振興事業費などを予算措置し、調査・保存・公開・継承の各段階にわたる事業を継続的に実施している。

(3)世界からの評価
 2024(令和6)年度、オランダの国際認証団体「グリーン・デスティネーションズ」が選出する「世界の持続可能な観光地トップ100選」において、遠野遺産認定制度が文化・伝統部門の世界1位に選出された。地域住民による日常的な保全活動が長期間継続されてきたことが評価されたものであり、「持続可能な観光まちづくり」のモデルとして国際的に認められた形である。

(4)文化資源の経済化・教育への展開
 遠野市観光戦略(アクションプラン)においても、文化財保護と観光・地域経済を一体的に捉え、「文化資源の経済化」を具体的なアクションプランとして推進している。担い手が減少している郷土芸能・祭りについても、観光客が参加できる仕組みを構築して継承を図る方向性が示されている。
 ウェブサイト「遠野の郷土芸能とまつり」(tonogeinou.com)において、芸能の種類や、役割、地区ごとの団体をわかりやすく検索できるようにした上で、参加条件を明示し、市内外の人が気軽に参加・体験し、そのまま担い手にもなれる手法を用いている。こうした取組の成果もあってか、遠野市の人口そのものは大幅に減少しているものの、郷土芸能に関してはそれほど減っていないとのことであった。
 教育面では、遠野市立博物館が「博物館教室」を通じ、多様なプログラムや、資料の貸出・出前授業を提供し、子どもたちが早い段階から地域の歴史文化に親しむ機会を確保している。

現在の課題

 「遠野市歴史文化基本構想」は、策定から間もなく10年を迎えることから、社会情勢の変化や地域の実情に即した修正が必要とされている。文化財を取り巻く環境としては、担い手不足、担い手の高齢化、資金不足といった課題が挙げられており、今後は本構想を基に、より実効性のある「文化財保存活用地域計画」への移行が予定されている。

所感・大府市への反映

 遠野市では、「未指定文化財」についても、地域住民が自ら発掘・推薦し、行政が支援する「遠野遺産認定制度」を長年継続している。こうした市民協働による取組が、「世界の持続可能な観光地トップ100選」の文化・伝統部門、世界第1位という国際的な評価につながったことは、参考となる事例である。
 特に、大規模なイベントだけではなく、日常的な保存・継承活動を地域の文化的価値として位置付けている点は、本市においても参考になる視点である。
 本市にも、子ども三番叟(さんばそう)や各地域のお囃子(はやし)、どぶろくまつり、おまんと祭りなど、多くの伝統文化が継承されている。一方で、指導者の高齢化や担い手不足、子どもや若者の参加者減少など、将来の継承に向けた課題も見られる。
 こうした課題への対応として、市内の伝統芸能や祭礼を個別に紹介するだけではなく、「大府市の伝統文化」として整理し、市内外への情報発信を強化することも一つの方法である。活動の認知度や評価が高まることで、担い手の意欲や地域の誇りの向上、新たな参加者の確保につながる可能性がある。
 また、遠野市では、県外から練習に参加する人を受け入れるなど、地域外にも門戸を広げている。本市においても、各保存団体の意向を尊重しながら、地域外の人や初心者も参加しやすい体制づくりを支援することが考えられる。
 さらに、文化財保護を観光や地域経済と結び付け、伝統食のブランド化や体験型ツアーなどの具体的な施策に展開している点も参考になった。本市の祭礼、郷土芸能、農産物、食文化についても、保存・継承に加えて、観光、教育、地域経済との連携を図ることで、持続可能な取組へ発展させられる余地があると考える。

SAVSを活用したフルデマンド型乗合バス「しわまる号」について【岩手県紫波郡紫波町】

取組の背景・目的

岩手県紫波郡紫波町

 紫波町では、町内にJR駅や路線バス、タクシーがある一方、町の東・西部は農村地域が広がり、高齢化や免許返納により、日常の移動手段の確保が課題となっていた。特に、町が補助して2003(平成15)年から運行していたコミュニティバス「すこやか号」について、2020(令和2)年度以降の継続が困難となる見通しが示され、町内の東・西部と中心部を結ぶ公共交通が失われ、交通不便地域が広く発生する懸念があった。
 このため、既存の定時定路線型バスに代わる新たな公共交通として、AI配車システムSAVS(Smart Access Vehicle Service サブス)を活用したフルデマンド型乗合バス「しわまる号」を導入し、通院・買物・公共施設利用など、住民の日常生活に必要な移動を確保することを目的として事業が開始された。

取組の内容・現状

 「しわまる号」は、2020(令和2)年4月1日から本格運行を開始した、ドア・ツー・ドア方式のフルデマンド型乗合バスである。路線や時刻表をあらかじめ固定せず、停留所を設けずに、利用者が乗降場所を自由に指定できる仕組みであり、高齢化の進展に伴い、自動車運転免許証の自主返納が増加する中、停留所までの移動が不要となる点は、高齢者にとって特に利用しやすい形態となっている。町民に限らず、町内を移動する人であれば利用可能で、電話又はウェブサイトから予約を行い、指定した場所で乗車し、指定した場所で降車できる仕組みとなっている。運賃は一人片道600円で、乗り合いが発生した場合は400円となる。2023(令和5)年12月には、過去最高となる2,604人の利用があり、利用実績は好調である。
 運行には、AI配車システムSAVSを活用している。利用者からの予約情報、車両の位置情報、目的地などをもとに、AIが最適な車両とルートをリアルタイムで計算し、ドライバーの端末に運行指示を送る。運行途中に新たな予約が入った場合でも、AIがルートを再計算し、効率的な乗合運行を実現している。
 導入に当たっては、既存のバス・タクシー事業者への聞き取りを行い、協議を重ねた。町内のみの運行、夜間は運行しないなど、既存タクシー事業とのすみ分けを図りながら制度設計を行っている。運行経費については、運賃収入や国庫補助を差し引いた額を町が補助している。補助に当たっては、「地域内フィーダー系統確保維持費国庫補助金」を活用しており、町の実質的な負担額は当初想定していたよりも少額に抑えられている。
 利用実績は増加傾向にあり、主な利用目的は通院と買物である。また、習い事に通うなどの用途による小学生のみの利用や、スポーツ施設、イベント、観光目的での利用も見られ、住民の日常移動だけでなく、地域活動への参加を支える交通手段としても機能している。こうした多様な使われ方は、電車・路線バス・タクシーなど既存の公共交通と組み合わせながら、住民一人一人に合った移動手段を選べる環境づくりにもつながっている。

現在の課題

 利用増加に伴い、希望時間帯に予約が集中した際の待ち時間の長時間化、ドライバーの休憩時間確保、電話予約が多いことによるオペレーター負担、車両更新などが課題として挙げられていた。また、予約について、高齢者にとっては携帯電話のアプリの使用そのものがハードルとなっており、電話予約に依存せざるを得ない状況が生じている。加えて、フルデマンド型の「乗合」運行であることから、他の利用者との乗合が発生した場合には、当初想定していたよりも移動に時間が掛かることがあり、利用者への丁寧な説明が求められている。

所感・大府市への反映

 紫波町の取組は、単にコミュニティバスをデマンド交通に置き換えたものではなく、地域の交通空白を生まないために、既存の交通事業者との調整、住民ニーズの把握、AI技術の活用を組み合わせた実践的な公共交通施策であると感じた。特に、ドア・ツー・ドアで利用できる点は、バス停まで歩くことが困難な高齢者や、免許返納後の移動に不安を抱える市民にとって大きな支援となる。
 本市においても、ふれあいバスなど既存公共交通は重要な役割を担っているが、高齢化の進展に伴い、バス停までの移動が困難な方や、定時定路線では対応しきれない地域・時間帯の移動ニーズが、今後、更に増えることが想定される。AIを活用したデマンド交通を導入することで、交通空白地域への対応や高齢者の外出支援、通院・買物支援の充実につなげられる可能性がある。
 一方で、導入に当たっては、既存のバス・タクシー事業者とのすみ分け、運行経費の持続可能性、予約集中時の待ち時間、ドライバーの確保、電話予約とウェブ予約のバランスなど、検討すべき課題も多い。特に、本市で導入を検討する場合は、全市一律ではなく、公共交通が不便な地域や高齢者の移動ニーズが高い地域を対象に、実証運行から始めることが現実的である。
 今回の視察を通じて、公共交通は行政が用意するだけでなく、住民、交通事業者、地域が共に育て、支えていく視点が重要であると再認識した。子どもの習い事などの外出時の利用も多いことから、保護者の送迎負担軽減にも役立っている点は重要な視点であると感じた。本市においても、既存の公共交通を維持しつつ、AIデマンド交通など新たな移動手段を組み合わせ、市民一人一人の生活に寄り添った持続可能な地域交通の在り方を検討していきたい。

デジタルメディア・コントロールチャレンジ「でめこん」について 【宮城県東松島市】

取組の背景・目的

宮城県東松島市

 東松島市では、全国学力・学習状況調査の生活習慣に関する調査結果から、市内の児童生徒について、ゲームやスマートフォン等のデジタルメディアを平日に長時間使用している割合が、宮城県平均を上回っていることが明らかになったことから、教育委員会として何らかの対策が必要であるとの認識を持ったことが取組の出発点となっている。
 一方で、行政や学校が一方的に「スマートフォンを使ってはいけない」、「使用時間を減らしなさい」と指導するだけでは、児童生徒の主体的な行動変容にはつながりにくいと考えられた。そこで、児童生徒自身がデジタルメディアとの関わり方について考え、互いに話し合い、自ら目標を設定して取り組む方法が採用された。
 東松島市では、2020(令和2)年度から、市内の小中学校の児童生徒代表が参加する「東松島市子ども未来サミット」を開催している。学校を越えて児童生徒同士が話し合う中で、2021(令和3)年7月に「東松島市子ども宣言2021」が制定された。
 この宣言では、デジタルメディア・コントロールの3本柱として、「時間」、「情報」、「健康」を掲げ、人との交流を深めること、家族との時間を大切にすること、個人情報を適切に管理すること、食事や睡眠を大切にすることなどが示された。その後、この宣言を具体的な行動につなげるため、2022(令和4)年度に「デジタルメディア・コントロールチャレンジ『東松島ゴール』」が設定され、この一連の取組が「でめこん」と呼ばれている。

取組の内容・現状

 「でめこん」は、デジタルメディアの使用を全面的に禁止するものではなく、児童生徒が自らの生活を振り返り、使用時間や使用方法を適切にコントロールする力を身に付けることを目的としている。
 「東松島ゴール」では、家庭学習や調べ学習等を除く、平日のデジタルメディアの使用時間、使用終了時刻について、目標が示されている。
 特徴的であるのは、これらを一律に守らせる「規則」ではなく、全市の児童生徒が目指す「ゴール」として位置付けている点である。
 各学校では、児童会や生徒会が中心となり、それぞれ工夫を凝らした取組が展開されている。小学校では、家庭でのデジタルメディア使用時間や家庭学習時間を記録する「がんばりカード」を作成し、保護者が確認する取組などが行われている。中学校では、ポスターや啓発キャラクターの制作、校内放送、文化祭や地域行事での発表、アンケート調査、啓発ソングの制作など、児童生徒の発想を生かした活動が行われている。
 特に、矢本第二中学校では、毎月第2水曜日を「SND48(スーパーノーメディアデー)」とし、その日のメディア使用時間を48分以内にしようとする取組を実施している。そのほか、「でめこん川柳大会」、校内キャラクターの制作、アイドルグループを模した啓発活動、替え歌の発表など、児童生徒が楽しみながら参加できる工夫が見られた。
 また、市内の小中学校11校全てがコミュニティ・スクールを導入しており、学校だけでなく、家庭や地域も共通の課題として「でめこん」に関わっている。小中学校間の連携も進んでおり、中学生が取りまとめ役となり、小学生と中学生が一緒に話し合い、共通の目標に向かって取り組んでいる点も大きな特徴である。
 教育委員会では、「子ども未来サミット」を継続して開催するとともに、小学校5年生を対象に、大学の研究者による脳科学に基づいた講演を実施し、デジタルメディアの長時間使用が与える影響について学ぶ機会を設けている。また、幼稚園、保育園にも啓発資料を配布し、幼少期からの生活習慣形成に取り組んでいる。
 2026(令和8)年度の東松島市の教育方針においても、「でめこん」は「成長保障」の分野に位置付けられ、「学びを支える望ましい生活習慣の確立」の一つとして継続されている。

現在の課題

 児童生徒は、「でめこん」の取組を比較的・肯定的に受け止めているが、大人や保護者の理解は十分に進んでいない面がある。学校評価アンケートでも児童生徒と保護者の回答に差があり、家庭による取組状況の差もうかがえる。
 デジタルメディア・コントロールには、使用時間の管理に加え、情報モラルやデジタルリテラシーの育成も含まれるべきであるが、現状では時間短縮が目的化しやすい点が課題となっている。
 「でめこん」における取組の継続的な実施は、教職員の負担増加につながり得るため、新たな業務を過度に増やさない工夫が求められる。 

所感・大府市への反映

 今回の視察を通じて、この取組で最も評価すべき点は、児童生徒自身がデジタルメディアの影響について考え、自ら目標を定め、行動に移していることであると感じた。行政や学校が一方的に使用制限を課すのではなく、「時間・情報・健康」の3本柱のもと、児童生徒が話し合いを重ね、「東松島ゴール」という共通目標をつくり上げたことに、この取組の大きな意義がある。具体的な目安を示し、生活リズムの改善や、学習・読書・家族との時間の確保といった生活全体の質の向上につなげようとしている点も参考になる。
 また、児童生徒の豊かな発想を生かし、楽しみながら啓発を進めている点も印象的であった。特に、中学生が中心となって小学生を含む児童生徒の意見を取りまとめ、小中学校が連携して取り組んでいることは、児童生徒の自治的活動やリーダーシップの育成にもつながっている。
 さらに、市内全ての小中学校がコミュニティ・スクールであり、学校、家庭、地域が同じ課題を共有する仕組みが整えられていることも、取組を支える重要な基盤である。加えて、大学の研究者による講演など、科学的知見に基づく情報を児童生徒や保護者に示している点にも説得力がある。
 一方で、児童生徒と保護者の間で取組への意識に開きが見られることからも、デジタルメディアとの適切な付き合い方を子どもだけの問題として捉えるのではなく、保護者の意識改革に向けた、より実効性のある働き掛けが重要である。
 本市においても、学習と私的利用のメリハリをつけることや、睡眠・健康・家庭でのコミュニケーションを大切にする視点は、ますます重要となっている。まずは、全国学力・学習状況調査や市独自のアンケート等を活用し、本市の児童生徒の利用実態を把握することが必要である。
 その上で、単に使用時間を制限するのではなく、子どもの望ましい生活習慣全体を形成する取組の一つとして位置付けるべきである。本市において実施する場合には、子どもたち自身が話し合い、目標を考える機会を設けるとともに、学校や地域が家庭ごとのルールづくりを支援する視点も重要である。
 その際には、デジタルメディアを「制限する対象」としてのみ捉えるのではなく、情報モラルやデジタル・シティズンシップ教育を充実させ、自ら適切な判断ができる総合的なデジタルリテラシーの育成につなげることが望ましい。
 また、幼児期からの働き掛けも重要である。就学前から、家庭に対して、保護者が家庭内のルールを考えるきっかけをつくる必要がある。
 東松島市の「でめこん」は、子どもの主体性を尊重しながら、学校、家庭、地域が連携して健全なデジタルメディア利用と健康的な生活習慣の形成、情報活用能力の育成を両立させようとする有効な事例であり、本市においても、実態把握と議論を始める必要があると感じた。

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