厚生文教委員会行政視察 令和5年10月30日から11月1日まで

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ページ番号1029457  更新日 2023年12月6日

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令和5年10月30日から11月1日まで、埼玉県戸田市、千葉県松戸市及び東京都小金井市を視察しました。

戸田型オルタナティブ・プランについて【埼玉県戸田市】

取組の背景、目的

埼玉県戸田市にて

 戸田市の平均年齢は42.0歳で、埼玉県内で最も若いまちである。以前の同市は小中学校ともに学力、体力、非行問題行動、不登校などが課題であり、教員の質も低いという実情があった。その後、現在の教育長が赴任してから約10年で、学力は県内トップクラスとなり、体力も全国平均を超え、非行問題は極めてまれな状況となった。他市町にありがちな、中心モデル校とそれ以外の一般校という形ではなく、市内小学校12校、中学校6校全てが先進校、視察対象校となり得る状況となっている。教育改革のコンセプトとして、AIでは代替できない能力の育成と、AIを活用できる能力の育成をしていくことを目指している。

取組の内容と現在の状況

 戸田市教育委員会では、学校を、やらなければいけないことと、やってはいけないことしかない場所ではなく、全ての子どもたちにとって、やりたいことがある、心理的安全性のある居場所にすることを根幹とする戸田型オルタナティブ・プランを軸に、様々な改革が進められており、未然防止、早期発見・早期対応、適切な支援のための選択肢を重視しながら、リアル、デジタルの両面からの支援の充実、様々な居場所の有機的な連携の強化に取り組んでいる。
 多様な学びの場の拡充による不登校支援としては、戸田型校内サポートルームである「ぱれっとルーム」を小学校全12校に設置し、全小学校にスクールサポーターも配置している。学校生活上、不安や困難を感じている児童や不登校傾向児童に多様な居場所を確保することで、早期の対応と支援を行っている。また、教育センター内にある不登校対策拠点である、「すてっぷ」を2教室に増設し、不登校支援の専門的知見を活用した教室運営、不登校児童生徒に適したカリキュラム編成、保護者支援、アウトリーチ型支援を行っている。各校でのスクールカウンセラーによる教育相談に加え、教育センターでの相談対応の時間も拡充しており、心理カウンセラーによる相談は土日だけでなく、週1回平日夜間にも対応している。
 民間との連携による、オンラインを活用した相談・支援体制も強化しており、オンライン不登校支援プログラムroom-Kを活用した教育相談や学習支援を実施。メタバース上の支援だけでなく、オフラインの支援者との連携も図っている。また、大学の教授等、外部研究員による最先端の知見を取り入れた不登校対策ラボラトリー「ぱれっとラボ」による効果検証や、民間会社との連携によるデータに基づく子どもの心の健康観察が実施されている。教育委員会及び市長部局に分散している子どもに関するデータを、教育分野を軸にした教育総合データベースとして整備し、データの標準化やデータフォーマットのオープン化等により、他自治体においても導入しやすい基盤とすることも目指しており、先述の「ぱれっとラボ」の取組にも生かされている。
 今後の検討事項として、校長を中心に学校組織のマネジメント力の強化、自主的、自立的な取組を進める学校への積極的な支援、社会の変化に素早く的確に対応するための教育委員会の在り方が挙げられており、多様な人財を得て機能を最大化し、社会に開かれた教育行政の実現を目指すとしている。教育長からは、本当に大切な教育改革は、国や教育委員会からではなく、学校現場から起こるべきであり、教育委員会のマネジメントを一律の管理から個別の支援にシフトし、学校に伴走し、積極的な自走を支援し、逸走や暴走を軌道修正する教育委員会でなければならないとの考えを伺った。

大府市への反映・所感

 戸田市では現在、不登校対策も含め、100 近くの産官学連携の取組が行われている。令和4年度の戸田型オルタナティブ・プランの当初予算には900万9千円が計上されているが、学校、学級を研究、実証の場として求めている、あるいはデータを求めている民間と積極的に連携することで、無償で実施できている取組がとても多い。ただし、エビデンスがあり、効果が見られたものにはお金をかけ、1年では成果が出ないと判断した場合は延長することもあるとのことであった。こうした産官学連携の積極的な活用により、最先端の知のリソースが得られるメリットは非常に大きい。
 低予算で設置された小学校の「ぱれっとルーム」については、子どもたちがだらしない過ごし方をしているという昭和的な目線との葛藤もあったとのことであったが、むしろ、そうした緩い環境が功を奏し、長期欠席者の減少、教室復帰が目に見えて進んだことから、当初は長期欠席者が多い3校でスタートしたものを、半年後には補正予算が組まれて全12校へと拡充するに至っている。本市で是非、参考にすべき取組であると考える一方で、空き教室がほとんどない本市の小学校で、居場所をどう提供するかが大きな課題となる。社会に開かれた教育とはどういうことか、魅力的な学校とはどうあるべきか、真剣に取り組んでおられる中で、変化する社会を教育の中に取り込んでいこうという息吹が感じられた。

共働き世帯における切れ目のない子育て支援(ほっとるーむ)について【千葉県松戸市】

取組の背景、目的

千葉県松戸市にて

 平成19年より実施している「ほっとるーむ」は、家庭における保育が困難な乳幼児を一時的に預かることにより、子育て中の保護者の子育てを支援するとともに、その負担を軽減することにより、乳幼児の健全な育成を図ることを目的に市内7カ所で行っている。

取組の内容と現在の状況

 市内に居住する生後6カ月から小学校就学前の乳幼児の保護者が対象で、美容院や買物等のリフレッシュにも使えるなど、利用の理由は問わない。2施設でコワーキングスペースが併設されており、休業日は月曜日が3カ所、日曜日・月曜日が2カ所、火曜日と水曜日が各1カ所となっている。実施時間は午前10時から午後6時までで、利用料金は1時間500円。利用日数の上限はないものの、1日当たりの利用時間4時間以内としている。利用実績は令和2年度に4,307人、3年度が6,119 人、4年度は7,540人であり、コロナ禍を経て増加傾向となっている。また、地域子育て支援拠点事業として無料で利用できる「おやこDE広場・子育て支援センター」が、市民センターや公民館、子育て支援センター、商業施設など28カ所に設置されており、子育て親子の交流の場の提供と促進、子育てに関する相談、援助の実施、地域の子育て関連情報の提供、子育て及び子育て支援に関する講習等を基本事業に、NPO法人や社会福祉法人が運営を担っている。また、運営法人から推薦されたスタッフで松戸市が認める研修を受けて、認定を受けた子育てコーディネーターが全28施設に常駐で配置されており、ちょっとした悩みや不安をいつでも聞いてくれるなど、子ども、子育て支援に係る行政、地域との仲介役としての役割を担っている。

大府市への反映・所感

 今回、「ほっとるーむ松戸」を実際に見学もさせていただいたが、祖父、父親と思われる方の利用も見られた。土日などの利用は100 組200 人ほどあり、市外から来られる方もいるというお話であった。一時預かりはおおむね10~15 人程度で、1日の間に入れ替わりがあるとのことである。運営は、市内で保育事業を行っている法人が担っており、行政と顔の見える関係性を築くことができる点は参考にすべきと考える。
 子育ての支援拠点となっている「おやこDE広場・子育て支援センター」は偏在することのないよう、各地域にまんべんなく設置されており、近くの施設で気軽に相談できる体制が整えられている。市の子育て情報LINE 公式アカウントの受信設定で、マイ・サポート・スペースとして登録施設を1つ選ぶことで、イベント等の情報がセグメント配信される仕組みも導入されており、子育て支援に特化した情報発信にLINEが活用されている点は、本市と異なる特徴と言える。子育てコーディネーターは合計88名となっており、毎年度のフォローアップ研修や協議会を通じた改善と、質の担保が図られている。主にNPO法人や保育園の社会福祉法人への委託事業で実施され、報酬は委託料の中で支払われている。なお、市の予算措置としては、国の重層的支援体制整備事業の交付金を活用しているとのことであった。交付金や補助金等、国の財源の活用は本市としても積極的に行っているところであるが、松戸市に負けない引き続きの奮闘を改めて期待したい。

子どもの想いを大切にする子どもオンブズパーソン(子どもの権利救済機関)について【東京都小金井市】

取組の背景、目的

東京都小金井市にて

 平成21年の小金井市子どもの権利に関する条例の制定から10年が経過したものの、子どもの悩みの実感に改善が見られない、相談機関の利用が子どもにとってハードルが高いといった現状から、相談してもいいんだと子どもが思える、困りごとに寄り添った対応のできるワンストップの機関が必要と考え、令和2年に小金井市子ども・子育て会議内に子どもの権利部会を設置して検討を開始。令和4年4月、子どもオンブズパーソンに2名を委嘱し、同年9月から相談事業を開始した。
 小金井市子どもの権利に関する条例第16条に基づき、子どもの権利の侵害に関する相談と救済に取り組むとともに、子どもの権利を実現する文化及び社会をつくるため、市長の附属機関として設置されたものである。

取組の内容と現在の状況

 体制面では、オンブズパーソン2名、相談・調査専門員3名(児童福祉、教育、心理等の有資格者)、事務局に1名配置されているほか、相談室も設置されている。市内に在住、在勤又は在学している18歳未満の子どもを対象とし、電話やメール、手紙だけでなく、対面での相談も可能である。開設に当たり、チラシやパンフレットはもちろんのこと、子ども向けサイトやYouTube動画の公開、学校へ出向いての権利学習など、様々な媒体あるいは手法を活用した周知・啓発が積極的に行われた。
 令和4年度の新規相談件数は29件(子どもからの相談15件)で、その後の相談者とのやりとり、関係者や関係機関への対応、調整、情報収集等の活動回数は209回に及んでいる(申立件数0件)。相談項目としては、学校教職員の対応、対人関係、家庭・家族が多く、相談方法はメールフォームが13件と最も多く、次いで電話9件、面談6件の順となっている。なお、令和5年度の相談件数は、9月末の時点で27件(申立件数0件)とのことであった。
 今後は、そもそもの設置の目的でもある活用までのハードルを下げることや、そのための周知・啓発を引き続き行っていくこと、また、権利学習や文化醸成を更に進めていくことも課題としている。

大府市への反映・所感

 小金井市では、あらゆる子どもの権利侵害に関する相談、救済の機関であること、子どもの最善の利益を第一に考慮し、子ども主体の解決を目指していること、子どもに寄り添い、子ども自身の考えを尊重しながら、子どもにとって一番良い方法を子どもとともに考えていくことを、活動の基本としている。関係者や関係機関との調整、調査を行う機能を有するほか、権利侵害がなお続く場合には勧告等を行うことができるなど、権利擁護オンブズパーソンとしての役割を担うものであり、その活動を通じて、子どもの権利が実現されるまちづくりを目指している。
 学校での相談は市内各校で実施されており、東京都からのスクールカウンセラーの派遣は週3日、スクールソーシャルワーカーは 週に1回又は2週に1回の頻度となっている。担任や養護教諭が聞き取りを行うことも多いことから、学校との関係性構築は非常に大切であることが伺える。子どもが相談に来た際、親にその内容を共有するかどうかは、虐待などの通告は別として、子ども自身の希望に添った対応を行っているとのことであった。
 権利は盾のように自分のことを守ってくれる、という子どもの意見もある一方、権利とともに義務もあることや、自らの権利のみを振りかざすことがあってはいけないなど、子どもに権利について伝え、適切に理解してもらうことは容易ではない。だからこそ、子どもだけではなく大人に対しても周知と理解を図り、子どもの権利が実現される文化の醸成につなげていくことが極めて重要となる。
 本市においては、本年8月末に、大府市こどもどまんなか応援サポーター宣言を行っており、その中には、「こどもとこどもにかかわるいろいろな人の気持ちや意見をよく聴きます」との文言がある。大人が真剣に受け止めてくれた、解決に向けて一緒に考え、動いてくれた、といった経験が、子ども自身のエンパワーメントを高めることにもつながるという側面も踏まえつつ、聞く体制を整備していくための具体的な方策を検討していく上で、小金井市での取組も参考にしていただきたい。

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