厚生文教委員情報交換会(至学館大学健康科学部体育科学科 浅野 幹也 氏) 2026(令和8)年9月25日
本委員会のテーマ活動「こどもの身体づくり」の一環として、2026(令和8)年9月25日、こどもの運動発達を専門とする至学館大学健康科学部体育科学科の浅野幹也教授、また、こども健康・教育学科の鈴木達見教授にも同席いただき、情報交換会を行った。情報交換会では、幼少期の基本動作の習得、運動遊びの意義、こどもを取り巻く環境の変化等について説明を受け、情報交換会終了後には意見交換会を行った。その中で、運動の成績や競技力だけでなく、将来にわたり自ら身体を動かすことのできる土台を育む視点が示された。
こどもの身体づくりについて

情報交換会の主な内容
- 「三つの間」の減少と多様な動作経験
こどもを取り巻く環境について、遊ぶ「時間・空間・仲間」という「三つの間」の減少に加え、スクリーンタイムの増加により、日常の中で身体を動かし、多様な動きを経験する機会が少なくなっていることが課題として示された。小学5年生では運動・スポーツが好き、もっとしたいと考えるこどもが多いという調査も紹介され、活動量の少ないこどもを単純に「運動嫌い」と捉えるのではなく、参加できる機会や環境が十分にあるかを見る必要があるとの説明があった。 - 幼少期に身につけたい「36の基本的な動き」
幼少期は神経系の発達が著しく、走る、跳ぶ、登る、投げるなど「36の基本的な動き」を幅広く経験し、身体を巧みに使う基礎を育てることが重要である。特に「投げる」動作は、腕だけでなく、脚の踏み出しや体幹の回転など全身を連動させる動きであり、経験を通して段階的に発達することから、投距離だけでなく動作そのものの習得を見る視点が示された。現代では日常生活や遊びの中で投げる経験が減少しており、体格や手の大きさに合った用具などを工夫し、多様な動作を経験できる環境を整える必要がある。 - 「運動させる」から「遊びの中で自然に動く」へ
身体活動は「1日60分」を一つの目安としつつ、まとまった運動時間だけでなく、徒歩での移動、家庭での手伝い、親子遊び、公園や保育園での遊びなど、短い活動を一日の生活全体の中で積み重ねる考え方が示された。また、鬼ごっこなどこどもが夢中になれる遊びや、日本スポーツ協会のアクティブ・チャイルド・プログラム(ACP)を参考に、「楽しさ」や「できた」という経験につなげることが重要である。大人が一方的に運動をさせるのではなく、こどもの主体性を尊重しながら、多様な動きが自然に生まれるようルールや用具、遊び方を工夫する必要がある。一方で、自己決定に任せ切るのではなく、発達段階や一人一人の得意・不得意に応じて、大人が遊びや環境を調整し、必要な動きを引き出す支援も重要である。 - 家庭・保育園・学校・地域・行政が支える活動機会
特別な用具や広い場所がなくても、風船遊び、宝探し、雑巾がけ、荷物運びなど、遊びや日常生活の中で多様な動きを経験できることが紹介された。こどもの身体づくりを「運動の時間」だけで捉えず、遊び、手伝い、移動、身支度など日々の活動の中で身体の使い方を育てることが考えられる。うまくできない場合には、本人の能力だけを課題とせず、活動の難しさ、道具、場所、大人の関わり方などを調整し、「できた」、「楽しい」という経験につなげることが重要である。地域においても、猛暑や公園の利用制限を踏まえ、公共施設や校庭、公園等を活用し、身近な活動機会の確保と、それを支える人材を整える必要がある。
情報交換会後の委員の意見と今後の論点
情報交換会後の委員間の意見交換では、睡眠・栄養も身体づくりに関係するものの、今回のテーマ活動では「身体を動かすこと」を中心に深めていく方向が確認された。その上で、(1)幼少期から基本動作を楽しく経験・習得できる環境、(2)運動機会の少ないこどもを含めた全体の底上げ、(3)家庭・保育園・学校・地域が連携した身近な活動機会、(4)取組の成果を確認する評価指標を今後の重要な論点として検討していく必要がある。
特に評価については、「身体活動時間が増えたこと」自体を最終的な成果とするのではなく、身体活動時間や参加率は取組の実施・過程を示す指標として位置付け、その先にある基本動作の経験・習得、運動への意欲や継続、運動機会の少ない層の変化などをどのように捉えるかが課題となった。5年後、10年後にどのようなこどもの姿を目指すのかを描き、継続的に確認できる指標づくりを検討する必要がある。
まとめ・大府市への示唆
今回の情報交換会を通じ、こどもの身体づくりは、体力テストの数値向上や競技スポーツへの参加だけを目的とするものではなく、幼少期から遊びや日常生活の中で多様な基本動作を経験し、身体を動かす楽しさを知り、自ら身体を動かす習慣を将来につなげていくことが重要であると再認識した。前回のオランダ体育で学んだ「楽しさ・自主性」、今回示された「発育発達に応じた基本動作」と「大人による環境づくり」に、作業療法の「こども・活動・環境の関係を見る」視点を重ねることで、運動が得意な子だけでなく、身体を動かすきっかけが少ない子や活動に困難を感じる子も含めた身体づくりにつながると考える。
学校生活の中で活動や環境を整えながら、自ら乗り越える力や「できる」を増やそうとする取組は、大府市で検討する際には、まずは既存の支援体制・大学等との連携の可能性を研究することが考えられる。今後は、身近な公園・公共施設等の活用、家庭で取り入れやすい活動、遊びを支える人材なども含め、「身体活動時間を増やす」という手段と「こどもの健やかな身体づくり」という目的を区別し、誰もが楽しみながら身体を使える環境と、その成果を継続的に確認できる評価のあり方を深めていく必要がある。
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