建設産業委員会行政視察 2025(令和7)年10月21日から23日まで

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ページ番号1037437  更新日 2025年12月5日

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 2025(令和7)年10月21日から23日まで、埼玉県春日部市、茨城県土浦市、茨城県龍ケ崎市、神奈川県居住支援協議会及び独立行政法人都市再生機構を視察しました。

借上型市営住宅制度について【埼玉県春日部市】

取組の背景、目的

埼玉県春日部市

 昭和30年代(1955年から1964年)から40年代(1965年から1974年)に、建設された木造市営住宅46戸が老朽化し、用途廃止・解体を進める方針が示されていた。
 新規建設には多額の初期費用や用地確保の課題があったので、解体等に伴う戸数の減少分を民間借上げで補う方向性が2012(平成24)年に市営住宅長寿命化計画で位置付けられた。

取組内容

  • 民間オーナーと20年間の一括借上げ契約を締結し、市営住宅として転貸
  • 入居者負担額と契約家賃との差額の2分の1を国が補助し、残りは市が負担
  • 建物・敷地の基準は市営住宅の基準に準拠
  • 運用中の物件は2団地、計48戸
  • 入居対象は子育て・高齢・障がい・単身世帯など。
  • 外国籍世帯の入居も多い。
  • 20年契約終了時は入居者全員の退去が原則で、契約更新は市とオーナーとの協議により決定

大府市への反映・所感

  • 老朽化した市営住宅の建て替えに比べ、解体費用や建築費用等を抑えられる点は有効である。
  • 希望する立地で住宅を確保しやすく、対象世帯の居住誘導に活用できる。
  • 20年契約終了後の居住継続や負担の在り方は大きな課題である。
  • 市営住宅の跡地を市全体の公共施設マネジメントで再活用する仕組みは参考になる。
  • 大府市でも、市営住宅の老朽化や分散配置を踏まえ、公民連携による供給手法を検討する余地がある。

まちなか定住促進事業について【茨城県土浦市】

取組の背景、目的

茨城県土浦市

 立地適正化計画及び中心市街地活性化基本計画のもと、都市機能と居住の配置を見直す必要性があった。
 駅前の新庁舎や図書館の整備を節目に、市外から市中心部への若年層や子育て世帯の転入を促し、まちなかで暮らす選択を支える必要性があった。
 

取組内容

  • まちなかへの住宅供給が進むよう、賃貸住宅建設を支援する仕組みを整備
  • 市外から転入する新婚・子育て世帯向けに、まちなか賃貸住宅家賃補助(月上限2万円)、まちなか住宅購入補助(最大50万円)を実施
  • 2014(平成26)年度以降、家賃補助を106世帯、住宅購入補助を124世帯が利用し、計230世帯、271人が中心部に居住
  • 賃貸事業者に対し、まちなか賃貸住宅建設費補助(一戸当たり100万円、1棟上限1,500万円)を行い、中心市街地でのマンション供給を後押し
  • 2019(平成31)年、2020(令和2)年、2022(令和4)年にマンションが相次いで建設され、合計350戸が供給
  • 補助金が転入の意思決定に与える影響や、家賃水準に与える影響などについて、定量的な分析・把握は今後

大府市への反映・所感

  • まちなか定住促進は、再開発・公共空間の整備と組み合わせて初めて効果が出ている印象がある一方で、学生などの短期滞在層も対象となっており、「定住」という観点からは効果を見極める必要がある。
  • 高齢者については、中心部への居住誘導ではなく、バス・乗合タクシー等の移動支援で対応している。
  • 地価や家賃水準が比較的高い本市では、費用面で踏み切れない層を含めた住み替えを希望する人への支援を整理することが重要となる。
  • 大府市では市内全体の人口バランスや生活動線を踏まえると、市外在住者のみを対象とするのではなく、市内在住者も含めた制度設計とするほうが、より実効性の高い「ダイナミックなコンパクトシティ」の推進につながると考える。
  • 補助制度だけではなく、駅前の公共空間・商業・交流機能の整備と合わせて、まちなかでの居住を考えるべきである。

AIオンデマンド交通「龍ケ崎のるーと」について【茨城県龍ケ崎市】

取組の背景、目的

茨城県龍ケ崎市

 龍ケ崎市は、四つの住宅系市街地が分散する「多極ネットワーク型都市構造」となっている。
 その中で、JR常磐線「龍ケ崎駅」は市の西端に位置しており、市内各地からのアクセスが課題となっている。
 従来、コミュニティバスは循環ルートに加えて枝線8路線で運行していたが、1便当たり2人以下という利用の少ない路線も多く、「空気輸送」に対する不満の声が寄せられていた。
 こうした状況を踏まえ、市は枝線を8路線から3路線へ整理する取組に着手したところである。

取組内容

  • 従来バスの利用が少なかった市東部地域に281カ所の乗降場所を設けた乗合型の交通サービスを提供
  • 利用者の負担する運賃は、1乗車大人300円
  • AIが予約状況に応じてエリア内における運行ルートを自動設定
  • 5カ月間の実証実験を経て、令和7年4月から本格運行へ移行
  • 予約方法は専用アプリ・電話・LINE・ウェブサイトの4通りで、世代を問わず利用しやすい設計
  • 利用者の年代は50代以下と60代以上がほぼ半々で、特に30代の利用が多数
  • コミュニティバスの枝線を8路線から3路線に再編することで、年間運行経費を約2,400万円削減
  • システム費用や運行費用の固定経費があるものの、従来の固定ダイヤのバスのみの場合と比べると、高いコストパフォーマンス

大府市への反映・所感

  • AIオンデマンド交通を低利用路線の代替手段として組み合わせることで、移動手段の確保と財政負担の抑制を両立できる。
  • 丁寧な説明会等を通じて専用アプリの利用が高齢者にも広がっている点は、本市でデジタル手段を活用する参考になり得る。
  • 免許返納者向けに、コミュニティバス・AIオンデマンド交通・乗合タクシーの無料利用枠を選択制で用意している仕組みも参考となる。
  • 予約後に乗車しないノーショー(無断キャンセル)など、運用上の課題もある。
  • 導入コストやランニングコストは、本市の循環バスと比較しても相対的に安価と考える。
  • 本市では前提が異なるため、AIオンデマンド交通を一足飛びに導入するより、小規模な乗合サービスとの組合せから段階的に検討していくのが現実的と考える。

家族で考える空き家予防について【神奈川県居住支援協議会】

取組の背景、目的

神奈川県居住支援協議会

 単身高齢者の持ち家が空き家予備軍として増えている。
 従来の行政対応は、特定空家など問題化した後の是正措置が中心であり、予防段階の手立てが不足していた。
 住宅・不動産に焦点を絞った空き家予防型の終活ノートを通じ、家族で話し合うきっかけづくりを狙った取組である。

取組の内容

  • 居住支援協議会を母体に、神奈川県の住宅計画課と司法書士会・行政書士会・土地家屋調査士会、市町村などで分科会を構成、国の補助金を活用して空き家予防型の終活ノートを共同作成
  • 「空き家にしない『わが家』の終活ノート」は以下の四つの章で構成
  1. 本人用ページ :自分の情報や家系図、住宅・不動産の状況を整理・記入
  2. 家族向けページ:相続・登記・境界などの基礎知識や終活の参考制度
  3. 相続・手続情報:亡くなった場合の手続や相続登記
  4. 相談先案内  :相談できる関係団体の情報や参考コラム
  • 各章には解説と記入欄をセットにしており、使いやすさに配慮
  • 市町村や地域包括支援センターを通じて配布し、一部自治体では書き方講座の開催など、家族会議の場づくりと組み合わせて活用

大府市への反映・所感

  • 法的介入が難しい空き家予備軍の段階から、福祉的な相談ルートの中で家族会議と早期相談を促す仕組みは、住宅政策と福祉施策の間を埋めるモデルとして参考になる。
  • 本市の「さくらノート」に付け加えることで、「住宅の終活ノート」として家族で話し合うきっかけにもなるとも考える。
  • 窓口に来ない層や離れて暮らす家族への周知が難しい点は本市でも共通しており、保険会社やコンビニ、地域包括支援センターなど、多様な連携による周知方法には検討の余地がある。
  • 現状の制度は、特定空家など問題化した後の是正措置が中心であるが、予防的なツールや家族向け講座を組み合わせることで、空き家対策をライフステージに応じた住まいの選択支援へと広げることが、本市でも方向性の一つになり得る。

「住みよさ」について【独立行政法人都市再生機構】

取組の背景、目的

UR

 昭和期に大量供給された団地の建て替え・維持管理の負担が増大している。
 また、居住者の高齢化と単身化が進み、従来の住宅管理だけでは生活課題への対応が不十分である。さらに、外国籍住民の増加により、多文化対応やルール周知の仕組みも求められている。
 よって、住宅単体ではなく、地域の価値や暮らしを再構築する発想が必要であった。
 

取組内容について

  • 団地の建て替え・集約化と、余剰地への子育て施設・高齢者施設・商業機能などの導入
  • 無印良品・IKEAとの協働リノベーションや家賃割引制度による若年層の誘致
  • 健康寿命サポート住宅など、高齢者向け住環境の改善
  • 「くらしつながるサポーター」を配置し、見守り・相談・地域機関連携を日常業務に組み込む仕組み
  • 多文化共生に向けたごみ出しルール等の多言語化、防災・交流イベントの実施

大府市への反映・所感

  • 都市再生機構は住宅管理を生活支援やコミュニティ支援と一体化しており、単身高齢者が増える本市にも通じる発想である。
  • 市営住宅の規模では大規模再整備は難しいが、日常的な見守りや地域との連携を取り入れる人的支援の組込みは応用可能ではないか。
  • 多文化対応の取組は、市営住宅だけでなく、市全体で安心して暮らせる環境づくりという視点で重要である。
  • 住環境の改善と地域包括ケアを重ねて考えることで、本市の「住みよさ」の形が更に明確になるのではないか。

このページに関するお問い合わせ

議会事務局 議事課
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