総務委員会行政視察 2025(令和7)年10月6日から8日まで

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ページ番号1037143  更新日 2025年11月18日

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 2025(令和7)年10月6日から8日まで、埼玉県入間市、栃木県宇都宮市及び群馬県前橋市を訪問し、それぞれにおける自治会活動支援や地域コミュニティ施策の実情について視察を行いました。
 いずれの都市においても、共通して「自治会活動の担い手不足」、「加入率の低下」、「地域のつながりの希薄化」といった課題に直面しており、各市がそれぞれの地域特性に応じて、多様な支援策や制度設計を試みていた点が印象的でした。以下、各視察先における取組内容と、本市への示唆を報告します。

地域コミュニティづくり事業について【埼玉県入間市】

取組の背景、目的

埼玉県入間市

 近年、全国的に少子高齢化や単身世帯の増加、地域コミュニティの希薄化が進み、従来の地域運営の在り方が変化してきている。特に新型コロナウイルス感染症の流行期には、対面での会合や行事の中止・縮小が相次ぎ、住民同士の交流機会が著しく減少した。この結果、防災・見守り・地域行事運営といった地域協働型の課題対応が困難化し、地域力の低下が懸念される状況となった。
 こうした背景のもと、市民が地域を支える主体として活動できる環境づくりを目的に、行政と住民が協働する体制の構築を目指した「地域コミュニティづくり事業」が開始された。行政が一方的に支援するのではなく、住民の自発性と地域課題解決力を高める仕組みを整えることが狙いである。

取組の内容

 財政支援としては、自治会への補助制度を設け、本市と同様の支援を実施している。人的支援では、各地区区長会の事務局支援、防災訓練時の職員派遣、自治会行事への職員ボランティア参加、そして学生を活用した「自治会支援協力員」派遣制度などがある。特に学生ボランティアの育成には力を入れており、大学訪問による協働調整を行いながら若年層の地域参加を促している点が特徴である。
 さらに、ICT支援として、タブレット端末の整備や自治会運営のデジタル化推進のための勉強会を開催している。具体的には、
 ・インターネットによる自治会加入申込手続の導入
 ・自治会ハンドブックの作成
 ・地域商業者と連携した「自治会優待カード」の発行(商業者協賛による無予算運用)
などの施策を展開している。特に「自治会優待カード」は、地域経済と自治会活動を結びつける新たな発想として注目される。

課題

 課題としては、全国的に共通する「担い手不足」、「加入率の低下」、「若年層・転入者との接点形成の難しさ」が挙げられる。入間市においても、特に新住民層へのアプローチと情報発信の強化が求められている。

大府市への反映・所感

 入間市の取組は、本市が抱える自治会課題と極めて共通性が高いと感じた。同市では2024(令和4)年度に民間の事業コーディネーターを登用し、地域ごとの課題を可視化する調査を行い、事業報告「入間市自治会の現状の見える化と今後について」をまとめた。このように外部人材を活用して現状分析を行うことは、本市においても有効な手法であると考える。
 また、自治会ハンドブックによる市民啓発は、自治会活動の意義をわかりやすく伝える好事例であり、今後の市民協働の推進に資するものである。
 さらに、入間市の自治会優待カード制度は、地域経済活性化と自治会加入促進の双方に寄与する可能性を持つ。本市では、一定の予算措置を講じたうえで、商業者側の負担を軽減しつつ実施すれば、継続的な制度運用と地域貢献が両立できると考える。

自治会加入促進の取組について【栃木県宇都宮市】

取組の背景、目的

栃木県宇都宮市にて

 宇都宮市は人口増加が続いているが、自治会加入率は約40年間で30%減少し、現在は61.2%となっている。世帯構成の変化や居住形態の多様化、働き方の変化が背景にあり、地域コミュニティの維持が難しくなっている。
 この状況を踏まえ、2025(令和7)年3月に「宇都宮市地域で支え合う自治会条例」を制定し、自治会の持続可能性を確保しながら、地域で支え合う社会の構築を目指している。

取組の内容

 同条例は、(1)市民は地域社会の一員であるとの自覚、(2)自治会の役割と存在意義の共有、(3)自治会の自立性と地域特性の尊重の3原則を掲げている。条例に基づき、行政は自治会活動の支援と周知啓発を強化し、補助金の加入要件を拡大するなど、加入促進と活動活性化に取り組んでいる。
 また、自治会費の口座振替導入支援、電子回覧板機能を含む運営支援アプリの開発(2026(令和8)年度導入予定)、高齢者等の活動負担軽減策を実施する自治会への支援金交付など、きめ細かな支援を進めている。

大府市への反映・所感

 宇都宮市では条例制定を通じて、市が自治会を全面的に支援する姿勢を明確化し、予算措置の根拠を強化している。条例という形で制度的裏付けを設けることは、行政と市民が共に責任を分担する姿勢を明確にする点で意義が大きい。
 また、同市で展開している自治会会員向け優待制度「宮PASS」は、飲食・商業・医療・レジャーなど多方面の事業者と連携し、加入者に多様な特典を提供する取組である。地域経済の循環促進と自治会加入の動機付けを同時に実現しており、本市でも導入を検討する価値があると考える。

自治会支援について【群馬県前橋市】

取組の背景、目的

群馬県前橋市にて

 前橋市の自治会加入率は、2025(令和7)年度時点で83.5%と全国的に高い水準を維持しているが、減少傾向にある。課題として、役員の高齢化・固定化、活動の形骸化、会員減少、外国人住民への対応、自治会機能の低下などが挙げられ、本市と同様の問題を抱えている。
 こうした課題に対し、前橋市では国の補助金を活用し、自治会のデジタル化を推進することで、事務負担軽減と加入促進を図っている。

取組の内容

 同市は、自治会に対して4事業(行政連絡、地域交流支援、環境美化、生涯学習奨励)を一体化した「自治会一括交付金」を交付し、事務の効率化を進めている。また、集会所等の整備費補助や自治会へのタブレット端末貸与も行い、市と自治会の連携強化を図っている。
 2023(令和5)年度には全自治会へのタブレット貸与を完了し、操作研修会を実施。さらに、有償ボランティア「まえばしデジタルサポーター」や「デジタルよろず相談所」を設置し、出張サポートや個別支援体制を整備している。
 この結果、市と自治会間の情報共有が飛躍的に向上し、自治会からの道路・水路整備要望等もオンラインで効率的に行われるようになった。

今後の取組と課題等

 今後は、タブレットを活用した電子回覧板、LINE、Gmail等による情報発信支援を拡充し、地域活動の可視化を進めていく方針である。特に、「過去の報告型」から「未来の案内型」へ情報発信の転換を図り、住民の参加意識を高める取組が進められている。

大府市への反映・所感

 前橋市の取組は、自治会事務の効率化と情報発信力の強化を両立させた好例である。担当係長の「加入している人に関心を持ってもらうことが重要であり、地域を巻き込むためには情報発信が鍵である」との言葉は印象深い。
 本市でも、自治会のデジタル化を進めることで業務の効率化を図るとともに、双方向型の情報発信を通じて加入意欲を高める仕組みを導入すべきである。また、外部アドバイザー制度を設け、専門的知見をもとに新たな取組を生み出す支援を行うことも有効と考える。

おわりに(総括)

 今回の3市の視察を通じて、自治会活動をめぐる課題は全国共通である一方、行政の姿勢と仕組みづくり次第で住民主体の活動は大きく変化することを実感した。入間市の「外部人材との協働」、宇都宮市の「条例による理念の明確化」、前橋市の「デジタル技術の活用」という三つの方向性は、いずれも、本市が今後進むべき参考となるものである。
 本市としても、
 (1) 地域課題の見える化とデータ分析
 (2) ICTを活用した自治会運営支援
 (3) 加入促進施策(優待制度・広報強化等)
 (4) 外部専門人材の活用による伴走支援
の4点を軸に、地域コミュニティの再構築に向けた具体的な施策を検討すべきである。
 持続可能な地域運営体制の構築は、市民生活の安心・安全を支える基盤であり、今後も各市の先進事例を参考にしながら、より効果的な自治会支援の在り方を模索していきたい。

このページに関するお問い合わせ

議会事務局 議事課
電話:0562-45-6251
ファクス:0562-47-5030
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