第12話　大府駅で発見！！

9月になってもまだまだ厳しい残暑が続いている。おれは部活の大会の打ち合わせで名古屋に行かなきゃならない。大府駅まで 「ふれあいバス」 で行くか。ちょうど良い時間にバスが来るみたいだし、何より安い！高校生にはやさしい。バスに乗り込むとあいつと目が合った。えっ！？
「あれ？桃花？」
「え！？先輩？どうしてこんなところに？」
「おれは大府駅に行こうと…」
「え〜！私もです！こんな偶然って運命じゃないですか？」
「しー。お前バスの中なのに声でかいんだよ」
「あ、ごめんなさい」
バスに揺られて15分。大府駅に着くとにぎやかな声が聞こえてきた。
「先輩！あそこで野菜とかお菓子を売ってますよ！ほら、これが 『大府駅前マルシェ』 ですよ。見てくださいよ！ピエロまでいますよ！」
桃花が指さす先でピエロの格好をしたお姉さんがバルーンアートを作っていた。
「ちょっと行ってみましょうよ！」
「あ、おいちょっと待てよ。おれは今から名古屋に行かなきゃ…」
「こんにちは！」
「あら、こんにちは。ちょっと待ってね」
そう言うとピエロのお姉さんは、桃花と何やら楽しそうに話しながらサクサクと手を動かしていた。しばらくすると桃花がバルーンアートのトトロを差し出してきた。「はい、これは先輩の分です！私とおそろいですよ。大事にしてくださいね！」
「あ、ありがと。で、でも、今から名古屋に行かなきゃって…聞こえてる？」
「何言ってんですか、先輩。せっかく作っていただいたのにぃ。大事にしましょうね！ほら、こっちには地元の農産物も売られているんですよ。生産農家の方が直売してますからね。あと福祉施設の出店もあるし」
「電車に乗るまでの時間に買い物しちゃうな」
「先輩、あっちの 『KURUTOおおぶ』 にも行ってみましょうよ！ここはカフェと売店が一緒になってるんです。大府の土産品を売ってますよ。ぶどうのお菓子、巨峰ジャムや巨峰バター、タマネギのお漬物…あっ、今年、納豆のコンクールで日本一に選ばれた 『高丸食品の国産中粒納豆』 もありますね、スーパーだと売り切れちゃうってママが言ってました」
「こっちには、おぶちゃんグッズがあるぞ。毎年ゆるキャラグランプリにチャレンジしてるだろ？ジワジワ順位上がってきてるよな」
「カフェのメニューは地産地消で作られてますよ。タニタともコラボしててヘルシーですよ！！」
「というか、こんなに賑わってるイベントがあるなんて知らなかったな。来月もまた来てみようかな」
「そうですね…あの、先輩、これってデート、ですよね」
は、はぁ！？ちげぇよ！おれもう行かなきゃ！マジ遅刻するよ！！じゃ、またな！」
「は〜い！また誘ってくれるんですね！？待ってま〜す」（10月1日号へ続く）