第27話 冬の収穫

このページの情報をツイッターでツイートできます
このページの情報をフェイスブックでシェアできます
このページの情報をラインでシェアできます

ページ番号1015740  更新日 2020年10月28日

印刷大きな文字で印刷

木の山芋の収穫を手伝う大

寒さも厳しくなってきたというのに、俺はじいちゃんの友達の谷口さん家の畑仕事に駆り出された。
「大、悪いなぁ。せっかくの休みの日に」
「いいって。じいちゃんたちだけじゃ大変だろ?この丸くてゴツゴツした芋?これ何なの?」
「あれ?大君は知らんのか?これが木の山芋だよ」
「えー!おれ、初めて見たかもしれないな。木の山芋って?谷口さん、つまり山芋の一種なの?」
「そうなんだけどね、白くてきめ細かくて粘り気が強いんだ。栄養価も満点なんだよ。だからすり鉢ですりおろして食べるのがおすすめかな。すり鉢を逆さまにしても落ちないくらい粘り気があるんだよ」
「おおそうだ、谷口さん、前に木の山芋を使った芋焼酎を作ってなかったかい?」
「今でもあるぞ!げんきの郷とかふじや酒店で売っとるぞ。うちにも何本かあるから今度一杯どうかね?」
「お、いいねぇ。寒いときはお湯割りだね」
「じいちゃん!!ばあちゃんに言いつけるぞ!」
「大君、おばあちゃんには木の山芋をいくつかお土産に持って行ってよ。すりおろして海苔で巻いて揚げればおいしいよ」
「あ、ありがとうございます。ところで谷口さん、この地区のことをどうして木の山って呼ぶんですか?」
「ああ、それは熱田神宮造営のときに神木を献納したことからきたっていう説と、古刹円通寺の山号である〝瑞木山〞の瑞を除いて木の山と呼ぶようになったっていう二つの説があるんだがな…」
「熱田神宮の造設!?」
「そうなんだよ!木の山には1300年以上の長い歴史があるってことだよ」
大府にはまだまだおれの知らないことばっかりだな。
「大くん、今日は本当に助かったよ。嫌な顔せずに手伝ってくれて。最近じゃ若いもんの農業離れが止められんくて、どこも後継者不足だよ。年寄りだけじゃ収穫作業も大変なんだ。この辺の農家も20人程度しか残っていないからこの先不安だよ…」
どんな産業でも後継者不足は大きな問題なんだな。
「でも、このままではいけないって、木の山に嫁いできた若いお嫁さんたちが〝木の山マルシェ〞ってのを始めたんだ。毎月第2土曜日に木の山公民館でやってるんだ」
「ああ、あの朝市ですね?」
「谷口さん、そうやって新しいアイデアを出してくれる若いもんがいるじゃないですか」
「そうだな。まだまだわしも若いもんには負けられんな!」
「今夜はばあさんに木の山芋でごちそうをこさえてもらうから、焼酎で一杯やりながら大府の未来を語ろうかのう!」
「じいちゃん!またそう言って…」
うちのじいちゃんも、まだまだ元気だな。(1月合併号へ続く)

このページに関するお問い合わせ

企画政策部 企画広報課
電話:0562-45-6214
ファクス:0562-47-7320
企画政策部 企画広報課へのお問い合わせは専用フォームをご利用ください。