第16話 新しい年の始まりに
お正月は毎年、じいちゃんの家に親戚が集まる。つまり俺の家。普段静かな家も今日は笑い声があふれている。
「おい、たかし!最近学校はどうだ?」
朝からお屠蘇で少し赤い顔のじいちゃんが話しかけてきた。
「えっ、たかしって誰だよ。おれは大だよ!ま・さ・る!じいちゃんぼけてきてんじゃない?」
「こらっ!大!何てこというの!」
母さんがこたつの反対側から身を乗り出して俺の言葉を遮った。
「だって最近、物忘れがひどくなってるじゃん。毎日一緒にいるのに名前間違えるって…」
「おじいちゃんはまだまだ元気よ!」
母さんが本格的に怒り出したタイミングであずまからLINEが入った。
「あ、あずまがこっちに着いたって。桃花と迎えに行ってくるから」
母さんはまだ何か言ってるけど、俺は玄関で靴を履いた。
「ももちゃん!まー君!久しぶり!」
大府駅の階段を駆け下りてくるあずま。
「あずま先輩!おかえりなさい!」
久しぶりに会えたのが相当うれしいのか桃花はあずまに飛びついた。
「それにしても、たった1年足らずでずいぶん変わったね」
ずいぶん変わったのはお前の方だよ。髪の毛の色も変わって、 『都会に染まった』 ってやつ?!おれは心の中でつっこみを入れた。
「あっ、まさる、元気だった?受験勉強はかどってるの?」
「うっさいな。大丈夫だよ」
「あれ?あのオブジェってなに?」
あずまが指を指す。「あ、あれは 『OBUオレンジリングモニュメント』 です。大府市は認知症不安ゼロのまちを目指しているんです。オレンジリングは認知症サポーターの講習を受けた人がもらえるリストバンドです」
そういって桃花は自分の手首の 〝オレンジリング〞 を見せた。
「認知症サポーター?それって何?」
「認知症について正しく理解して、認知症の人やその家族を暖かく見守る〝応援者〞 のことです!」
「ももちゃん、詳しいね!」
また、桃花の講義が始まった。
「大府市は『大府市認知症に対する不安のないまちづくり推進条例』を1年前に制定したんです。認知症の理解をさらに広げるために『おおぶあったかオレンジプロジェクト認知症サポーター養成2万人チャレンジ‼』も実施しているんです。現時点で約1万人のサポーターがいるんですよ!」
「へー!大府市の人口が約9万2000人だから10人に1人はサポーターなんだね!」
「そういえば、最近うちのじいちゃんがやばいんだよ。もしかして認知症なのかな…」
「今まで普通にできていたことが急にできなくなったりしたら、それは認知症の初期症状かもよ!」
「今まで普通にできていたことが…」
「あれ?ちょっと変だなと思うことが大事なんです!本人が気づかなくても周りの人・家族が気づくこともありますよね」
「それで、もし認知症の疑いがあったらどうすればいいんだ?」
「いつ、どこで、何が起こったのかを記録しておくことが大切です!まずはかかりつけのお医者さんに相談して、必要であれば大きな病院を紹介してもらうことも必要になるかもしれませんね」
じいちゃんが認知症なのかはわからないけど、可能性はゼロじゃないからな…今度母さんにサポーター養成講座を受講することを勧めてみよう。(2月1日号へ続く)
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