第22話　ローカル・ヒーロー

梅雨も明けて本格的な夏の暑さが始まった。おれはいつもの気の置けないメンツと学食で涼みながら話をしていた。「そういえばこの前、消防団の消防操法大会を見に行ったんだ」
「え、なにそれ？」
「消防団が消火活動の速さ、正確さを競う大会だよ。日頃の訓練での成果を試す時さ。こうして実際の火災現場でも無駄のない動きができるようにするんだよ」
「へー、そんなのあるんだ。でもその日って雨だっただろ？」
「今年で45年続いてる大府市内でも伝統ある行事なんだぞ！雨も強く降ってたけれど、災害は天気を選ばないからな！雨の中でも機敏に動いてる姿はかっこよかったんだ！ほら、これ見てみろよ」
「へぇ〜、これがそのときの動画？ほんとだ。かっこいい♡活動服姿ってきゅんってくるわね〜」
「何言ってんだか…真面目に話聞けよなぁ」
「大会には県大会もあって、大府、横根、北崎、共和、長草、吉田、森岡の7つの分団の中から毎年順番に出ているんだ。さらに4年に1度愛知県から全国大会に出場できる年があって、その年だけは市内大会で優勝した分団が県大会に出場するんだ。来年はその年だから多分今年以上に盛り上がるだろうな」
「へぇ…全国大会か…それでその消防団っていうのは普段他には何してるの？」
「実際に消防隊員と一緒に火災現場に行くこともあるんだ。そこで交通整理とか消防隊員を手伝ったりするんだけど、状況によっては消火活動をすることもあるんだよ。あと台風や地震なんかの災害時にも出動するんだ」
「なぁ、でも消防団員って普段は別の仕事をしてる人だろ？出動するときはどうするんだ？」
「火災が発生すると消防団員にメールが入るんだって。それで出動できる人が詰所に集まって出動するんだ」
「平日だと仕事が忙しくてなかなか出動できないんじゃないの？」
「いや、消防団の活動に積極的に協力している会社もあって、勤務中でも出動が許される会社はあるんだ」
「そうなんだ。消防団に入るのってなんか条件とかあるの？」
「あぁ、このパンフレットによると…該当消防団の区域内に居住、または勤務していること、18 歳以上であること、志操堅固で身体強健な人だって」
「じゃあ俺らは条件満たしてるんだな」
「女の子もいいのかな？」
「もちろん！消防団の活動には、女性ならではの活動もあって、たくさんの女性団員が活躍しているんだ！」
「大学入って中学からやってた野球も辞めちゃったし、最近体がなまってるからな…大丈夫かな ? 」
「体を鍛え直す良い機会じゃん、地域に貢献もできるしいいことばっかだろ！消防団に入団して、大府のヒーローになってやろうぜ！」（8月1日号へ続く）